現代文化学 科学哲学科学史専修

伊勢田 哲治 教授
科学哲学、倫理学
伊藤 憲二 准教授
科学技術史、知識のグローバルヒストリー

科学哲学科学史専修は、「科学とは何だろうか」ということについて哲学や歴史学の切り口から考える専修です。科学哲学は、科学のあるべき方法論の考察や、ある分野で使われる基礎的な概念(たとえば「空間」とか「自然選択」とか)についての分析などを通して科学への理解を深めていきます。科学史は、学説の移り変わりやある時期における科学と社会の関わりなど、さまざまな時代・地域における科学のありかたを見ることで科学の姿を明らかにしていきます。2人の教員がこうした異なったアプローチから行う授業を通して、学生が科学というものの姿を立体的にとらえられるようにすることが本専修の1つの特色です。

科学を対象とする以上、科学そのものについての具体的な知識は不可欠です。しかも、科学と一口にいっても、物理学、生物学、社会科学、場合によっては数学など、分野によってそのあり方は非常に多様です。学生は自分が研究対象として選んだ領域については教員や先輩のアドバイスを受けながら個別に学んでいます。

最近の卒業論文

  • ・認知心理学の成立と心理学史におけるその意義
  • ・時空の哲学における関係説対実体説の構図の再検討
  • ・脳組織化理論とトランスセクシュアリティ概念の関係
  • ・生態学的意識についての研究の検討

最近の修士論文

  • ・恐竜と鳥類の類縁関係を巡る論争――分岐学の影響の観点から

最近の博士論文

  • ・戦前日本の電気通信工学、1891–1937――研究開発過程への参入過程の分析

授業風景

専修の紀要『科学哲学科学史研究』

文学部受験生向けメッセージ

わたしたちの研究室でやっていることは、もっとも大まかにいえば、「科学とは何だろうか、仮説はいかにして知識となるか、科学はどのように発展してきたか」といった問いを掘り下げることです。もう少し堅苦しくいえば、現代文化の不可欠な一部である科学について、哲学と歴史学の視点からアプローチし、科学の認識論、学説史、そして科学と社会の関わりについても考察をめぐらす、ということになるでしょう。

近代科学が成立してすでに4世紀近くになりますが、その間科学はいろいろな分野で目覚ましい進展を遂げ、現代文化の重要な一分野を形成しています。わたしたしたちの研究室では「科学とは何だろうか」という基本的な問いをテーマとしますが、科学的営みの実際の姿を歴史をたどって明らかにするのが科学史の課題であり、科学的知識の成り立ちとあるべき姿を探るのは科学哲学の課題です。進化論や相対性理論といった具体的な科学理論においても、基本的なところにさかのぼっていけば哲学的な問題が隠れています。歴史的に有名な科学者たちの思考法も、現代の教科書に書かれていることとはずいぶん違っています。こういったことを調べていくことによって、科学についてのわたしたちの理解は一段と深まるでしょう。また、科学と技術との区別と関係、科学および技術と社会との関わりを論じることも重要な研究課題の一つとなります。理科系の知識と人文系の訓練とがともに必要であり、おもしろい課題がゴロゴロと転がっているこの分野にチャレンジしてみようという方はいませんか?

科学哲学科学史専修ウェブサイト

大学院研究科受験生向けメッセージ

本専修は、「科学とは何だろうか」という問いに哲学と科学史の二つの観点から答えることを目指す、日本では数少ない科学哲学科学史の専門家養成機関として新設された。専任のスタッフだけではカバーしきれない領域については、非常勤講師を招いて、広く科学哲学および科学史の問題が扱えるように配慮している。本専修の第一の特色は、科学哲学と科学史の両分野が研究の両輪となっている点である。科学哲学においては、論理的分析の重視、科学の具体的な題材(たとえば統計力学、進化論、空間・時間)に即した哲学的問題の重視、科学上の古典的著作の原典読解を踏まえた現代的な問題の追求が挙げられる。また科学史においては、ルネサンス以降の近代西洋科学の理論史的考察を中心に、原典批判に基づいた個別研究を踏まえた、哲学的視点の下での歴史的な科学像の探求が挙げられる。

大学院生に要求される条件は、この専修で研究を進めるためには、科学の学説内容を理解できるだけの科学的知識だけではなく、語学力や文献解読の能力という人文学特有の能力も必須だということである。科学を知らずに科学哲学や科学史をやることが無謀であると同様、科学の古典的著作を読みこなすための人文学的素養を軽視することも無謀である。たとえば、18世紀以前の西欧科学を研究するためにはラテン語は必修である。研究テーマによっては、その他の言語を修める必要が出てくるかもしれない。似たようなことは科学哲学についても言えよう。時間と空間の哲学をやるには相対論を学ばずにすませることはできないし、19世紀以降の科学哲学の歩みを検討するときには確率論の知識が絶対に必要である。修士課程に入る段階でこういった条件が満たされていることは難しいかもしれないが、その条件を自分の研究の必要に応じて将来満たしていくだけの心構えと根気があることは期待される。それだけの努力に値する学際的で面白い問題がたくさん見出されるのがこの研究分野なのである。

科学哲学科学史専修ウェブサイト

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