行動文化学 言語学専修

定延 利之 教授
記述・理論言語学、日本語
千田 俊太郎 教授
記述言語学、パプア諸語、朝鮮語、エスペラント
アダム・キャット 教授
印欧諸語歴史言語学、古期インド・イラン諸語、トカラ語
大竹 昌巳 講師
文献言語学、契丹語

京都大学文学部に言語学講座が開設されたのは1908年のことです。初代講座担任は、我が国の言語生活に欠かせぬ辞書として広く支持されてきた『広辞苑』の編者である新村出博士でした。開設以来、本専修は伝統的に言語の記述的および歴史的研究の分野で重要な役割を果たしてきました。その後の言語理論のめざましい発展を受けて、現在では記述言語学、歴史比較言語学に加えて理論言語学、ならびにそれらに基礎を置く個別言語および言語群を対象にした言語分析など、現代言語学のほとんどの領域にわたって研究・教育が行なわれています。

専修の雰囲気はたいへん明るく、研究室は勉学だけでなく、院生と学部学生の交流の場にもなっています。また、院生や学部学生による自主的な研究会・読書会も盛んに行なわれています。京都大学の「対話を根幹とする自由の学風」という基本理念は、本専修でもよく反映されていて、言葉にかかわる問題であれば、どのような問題であっても研究テーマとして選ぶことができます。学生の研究内容は、フィールド言語学、歴史比較言語学、文献言語学、コーパス言語学、音声学、音韻論、形態論、統語論、意味論、語用論、生成文法、認知言語学など多岐にわたっていて、また対象とする言語も洋の東西を問わずさまざまです。研究テーマが必ずしも教員の専門分野と密接に関連している必要はなく、みなさんが主体的に選ぶ研究テーマが実を結ぶように、ともに学び合っていきたいと考えています。

最近の卒業論文

  • ・副詞的修飾成分「普通に」の用法について
  • ・ヨーロッパにおけるSAE(Standard Average European)の形成過程
  • ・文法形式と音韻論による満洲語の形態素解析
  • ・掛け声「よいしょ」の実践条件について

最近の修士論文

  • ・突厥文字文献に見られる子音連続の書き分けについて
  • ・日本語コピュラ否定文の出現環境とその動機について
  • ・Tocharian Numerals

最近の博士論文

  • ・ベトナム語北部方言の音節内部構造の実験的研究
  • ・南琉球宮古語史
  • ・形態論と統語論の相互作用――日本語と朝鮮語の対照言語学的研究

対面式録音ブース

西夏文華厳経巻五(西夏文字活字本)――京都大学文学部蔵

京都大学言語学懇話会

文学部受験生向けメッセージ

普段、何気なく使っている、言葉というもの。あまりにも身近で、意識することもないかもしれません。言語学は、そんな「言葉」を対象として研究を行う学問分野です。

私たちは、頭・心の中にある思い・考えなどを言葉に託し、音声や文字にのせて、相手に伝え、あるいは、相手から受け取ります。この営みは人類が遥か昔から行ってきたもので、今も世界中で6000とも言われる数の言語が話されています。昔の言葉の姿、言葉の変遷、人が言語を生み出すしくみ、現代の諸言語のありさまなど、言語学の対象とする領域は非常に多岐にわたっています。言語は文化の重要なファクターでもあり、近年の急速な学際化・国際化の中で、言語学はますます大きな役割を果たすことが期待されています。

この専修では、現代言語学のほとんどの領域にわたって研究・教育が行われています。言語学の主要な分野としては、すべての言語に通じる仕組みを探る理論言語学、個々の言語の姿を明らかにする記述言語学、言語の変遷とかつての姿を再現する歴史比較言語学、さらにこれらを基礎として、現地調査を行って実際話されている言語に当たるフィールド言語学、古文献を読み解く文献言語学などがあります。

言語学専修ウェブサイト

大学院研究科受験生向けメッセージ

本専修は、明治41年(1908)に開設された言語学講座を継承するもので、記述言語学、歴史比較言語学をはじめ一般言語学理論や社会言語学の方法、あるいはそれらを基盤とする個別言語に関する研究と教育がおこなわれている。2024年度の授業科目は、講義科目として「ドム語概説」「リグ・ヴェーダを読む」「文字研究のあゆみ」「東アジア音韻研究」「統語論研究」「コーパスと言語研究」「認知構文論」「認知意味論研究」「多言語情報処理論」「ダイクシスとコミュニケーション」「会話分析から迫る言語とコミュニケーション」「英語の音声・音韻」「中国語音韻学:中古音について」「中国古文字学」「チベット・ビルマ諸語の地域言語学研究」「Tocharian and Indo-European Linguistics」「シベリア諸言語研究」「ソグド語文献から見るイラン語史研究」「チュルク語概説」「ロシア語学概論」「ロシア語における借用」、演習科目として「「自己らしさ」(egophoricity)をめぐる通言語的検討」「音声学」「「魅力的な日本語」・「難しい日本語」を題材とした日本語学・日本語教育的探究」「ラトビア語」「スラヴ語学概論」が開講されている。この他演習には「言語学の諸問題」という科目が設けられ、院生の研究発表とその内容についての議論がおこなわれる。

現在、大学院前期課程に11名、後期課程に14名の院生が在籍する。また研究室には、ほかに学部学生が37名、研修員、聴講生、研究生、研究員が併せて10名所属する。それぞれの研究内容は、記述言語学、歴史比較言語学、類型論、音声学、音韻論、統語論、意味論、談話文法、語用論、認知言語学など多岐にわたっている。また対象とする言語も日本語、朝鮮語、英語、タイ語、中国語、アイルランド語、ツングース諸語、リトアニア語、ギリシア語、サンスクリット語、ベトナム語、ビルマ語、アラビア語、モンゴル語、トルコ語、スワヒリ語など、洋の東西を問わずさまざまである。中には、日本の方言や琉球語、台湾やミャンマー、タイ、中国などで話されている少数民族の言語などの調査に出かける者もいる。文献を頼りに古語の記述をめざす者、さらには未解読の文字の解読に挑戦している者もいる。

過去数年間に提出された修士論文のテーマには次のようなものがある。

  • 平安時代京畿方言の音調体系に関する試論
  • The Particle *h2(e)u in Vedic and Beyond
  • 印欧語の接辞-*ti-のラテン語における発展
  • ジンポー語文法の概要
  • 日本語発話冒頭の「だ」について
  • ジュバ・アラビア語のプロソディ
  • 日本語における非情物主語の受動文
  • 北部伊豆諸島方言の歴史的グロットメトリーによる分析
  • Derivations of Nominal Expressions
  • 避ける言語行動にみる自己位置付けの実践
  • バイリンガル間の「釣られない」発話について

現在における言語学の多様性は院生の研究テーマに反映されるだけでなく、その研究活動にも現れている。研究室には常に数種の私的研究会が設けられ、多様なテーマのもとに外部の若手も交えて自由活発な研究交流がみられる。

言語学専修ウェブサイト

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