講義題目 2021年度

宗教学専修研究室 講義題目 2021年度

開講期・曜時限教員種別題目
前期月1杉村靖彦講義宗教哲学概論
[授業の概要・目的]
宗教と哲学は、人間存在の根本に関わる問いを共有しながらも、歴史的に緊張をはらんだ複雑な関係を結んできた。その全体を視野に入れて思索しようとする宗教哲学という営みは、多面的な姿ととりながら歴史的に進展し、現代でも大きな思想的可能性を秘めている。この授業では、その今日までの変遷を通時的に追うことによって、宗教哲学という複雑な構成体について、受講者が一通りの見取図を得られるようにすることを目的とする。

[授業計画と内容]
以下のテーマについて授業を行っていく(細部は変更の可能性あり)。
第1回 宗教と哲学:根本の問いから考える。
第2回 ミュートスからロゴスへ:哲学の誕生
第3回 ソクラテス、プラトン、アリストテレス:哲学における神
第4回 ユダヤ教、キリスト教、イスラム教:啓示と信仰の神
第5回 ヘブライズムとヘレニズムの出会い:キリスト教神学の成立
第6回 中世における神学と哲学:スコラ哲学と神秘主義
第7回 近世形而上学:デカルトと哲学的神学の流れ
第8回 宗教哲学の成立と展開(1):カントとシュライアマハー
第9回 宗教哲学の成立と展開(2):ヘーゲルとキルケゴール
第10回 「神の死」とニヒリズム:ニーチェ
第11回 哲学と宗教の「解体」的反復:ハイデガー
第12回 日本の宗教哲学と仏教的伝統(1):西田幾多郎
第13回 日本の宗教哲学と仏教的伝統(2):九鬼周造
第14回 アウシュヴィッツ以降の宗教哲学:レヴィナス
第15回 フィードバック
開講期・曜時限教員種別題目
後期月1杉村靖彦講義宗教哲学と宗教学―基本文献解題
[授業の概要・目的]
宗教哲学とは、哲学の一形態であると同時に、宗教研究のさまざまな道の一つでもある。この両面性とそれによる独自な意義が理解できるように、この授業では、宗教哲学と宗教学の歴史的関係を明らかにした上で、基本となる文献を幅広く選び、それぞれについて読解の手がかりとなるような解題を行っていく。それを通して、この分野における過去の重要な思索を自ら追思索し、宗教という事象を視野に入れた哲学的・学問的思索の一端に触れることが、この授業の目的である。

[授業計画と内容]
以下のテーマについて授業を行っていく(細部は変更の可能性あり)。
第1回 宗教哲学と宗教学(1):歴史的位置づけ
第2回 宗教哲学と宗教学(2):さまざまなアプローチ
第3回 宗教哲学と宗教学(3):現代的課題
第4回 パスカル『パンセ』:考える葦と隠れたる神
第5回 ヒューム『宗教の自然史』:経験主義的宗教論の嚆矢
第6回 カント『単なる理性の限界内の宗教』:根源悪論と宗教哲学
第7回 ニーチェ『道徳の系譜学』:ラディカルな宗教批判
第8回 ジェイムズ『宗教的経験の諸相』:宗教心理学の方法
第9回 西田幾多郎『善の研究』:日本の宗教哲学の出発点
第10回 モース『贈与論』:宗教社会学の豊饒な可能性
第11回 ハイデガー『存在と時間』:「現存在」と「死への存在」
第12回 ベルクソン『道徳と宗教の二源泉』:静的宗教と動的宗教
第13回 エリアーデ『聖と俗』:宗教現象学の射程
第14回 ヨナス『アウシュヴィッツ以後の神概念』:神概念の解体的変容
第15回 フィードバック
開講期・曜時限教員種別題目
前期水4杉村靖彦特殊講義「証言」論再考―その宗教哲学的射程をめぐって
[授業の概要・目的]
20世紀後半の現代フランス思想、およびそれに深く関与する思想家たちの間で、「証言」ないしは「証人」といった概念が鍵語として共有されていた時期があった。レヴィナス、ブランショ、リクール、デリダ、アガンベン等、数々の例を挙げることができる。そこで直接間接に参照されていたのは、「アウシュヴィッツの証人」の置かれた状況を範例とする極限的事態であり、「証言不可能性の証言」というべきその極度に屈折した表現形態であった。同時に証言や証人といった語彙は、聖書的一神教に根差した長い歴史をもつものでもある。上記の思想家たちも、それを踏まえた上で、各々の仕方でその「宗教的」リソースを換骨奪胎して再活用し、自らの哲学や文学の核心部に導き入れたのであった。加えてこの問題系は、記憶と歴史の関係という問題とも連動して、歴史認識論の重要な主題ともなった。
近年、このように宗教、哲学、文学、歴史記述等の多分野を横断しつつ尖鋭的な問題として問われたこの時期の「証言」論について、その全体像を描き直すような仕方で再考しようという動きが目立ってきた。本講義では、そうした研究動向にくみする者の一人として、宗教哲学の見地から、このような流れの証言論の全体像を可能な限り包括的に提示し、それが今日の宗教哲学にとってもちうる意義を問い尋ねてみたい。

[授業計画と内容]
以下の諸テーマについて、一つのテーマ当たり2、3回の授業を充てて講義する。
(「特殊講義」という、教員の研究の進展を直接反映させることを旨とする授業であるので、1回ごとの授業内容を細かく記すことはしない。また、以下の諸テーマにしても、細部については変更の可能性がある。)
1.現代フランス思想における「証言」論―俯瞰的展望
2.証言/証人概念の宗教的・哲学的系譜―歴史的考察
3.リクール・レヴィナス・デリダ―「証言の哲学」の諸変奏
4.ツェランを読むブランショ―証言のポエティクス
5.記憶・証言・歴史―証言のポリティクス
6.「証言の不可能性の証言」以後―宗教哲学の現在
開講期・曜時限教員種別題目
後期水4杉村靖彦特殊講義西谷宗教哲学の研究
[授業の概要・目的]
西谷啓治(1900-1990)は、西田、田辺の後の京都学派の第三世代を代表する哲学者であり、大乗仏教の伝統を換骨奪胎した「空の立場」から「ニヒリズム以後」の現代の思索の可能性を追究したその仕事は、没後30年を経て国内外で多方面からの関心を引きつつある。しかし、その全体を組織的に考察した本格的な研究は、まだほとんどないと言ってよい。
本講義は、この西谷宗教哲学の全体を通時的かつ網羅的に研究し、今後の土台となりうるような組織的な理解を形成しようとするものである。それによって、今日の宗教哲学がそこから何を受けつぐことができるかを、批判的に考究していくための拠点を手に入れることを目指す。
なおこの研究は、来年度以降も後期の特殊講義をあて、数年かけて進めていく予定である。今年度は、1940年頃までの初期の諸論考を主に扱うことになる。

[授業計画と内容]
以下の諸テーマについて、一つのテーマ当たり2~4回の授業をあてて講義する。
(「特殊講義」という、教員の研究の進展をダイレクトに反映させることを旨とする授業であるので、1回ごとの授業内容を細かく記すことはしない。また、以下の諸テーマにしても、細部については変更の可能性がある。)
1. ポスト西谷的宗教哲学へ―西谷宗教哲学の受け取り直しのために
2. 「空の立場」と「禅の立場」―西谷宗教哲学への俯瞰的導入
3. 卒業論文「シェリングの絶対的観念論とベルクソンの純粋持続」―西谷宗教哲学の端緒
4. 「悪の問題」への着手―西谷宗教哲学の導きの糸
5. 哲学的神秘主義と根源的主体性―前期西谷宗教哲学の二つの焦点
なお、最後の授業は、本学期の講義内容全体をめぐる質疑応答と議論の場とし、講義内容の受講者へのフィードバックを図る。
開講期・曜時限教員種別題目
前期火4伊原木大祐特殊講義マリオン現象学の問題構成(「donation」概論) 
[授業の概要・目的]
本講義では、昨年度に続き、フランスの哲学者ジャン=リュック・マリオン(1946-)の思索を手がかりとして、現象学を宗教研究に応用することを最終目標とした準備的・原理的探究を行う。宗教哲学的思索を推し進める上で、マリオンの現象学思想は有効かつ多様な分析ツールを提供してくれている。いわゆる「宗教現象学」とは異なる視点に立った「宗教‐現象学」の構成に目を向けつつ、主としてフランス現象学の先鋭化された諸思想を導きの糸としながら、その総合的形象としてのマリオン思想を読み解いてゆく。今年度の講義は、主として『Réduction et donation』から『Étant donné』への移行と両著作の思想的内実を取り扱う。 

[授業計画と内容]
初回は導入に当てる。第2回から本格的な議論に入ってゆくが、講義の性質上、各サブトピックに対して【 】で指示した週数を充てる。各々を論じるのに時間が足りない場合は、問題を深く掘り下げてゆく目的で、週数を調整・変更する可能性がある。
1. 導入的概説【1週】
2. 昨年度講義内容への追考(捉え直しと批判的検討)【3週】 
3. 「現象学の四つの原理」からdonationへ【3週】 
4. 与えられた現象の諸規定【3週】 
5. 与えられた現象の諸段階【3週】 
6. 飽和論の宗教哲学的意義【1週】 
7. フィードバック【1週】 
開講期・曜時限教員種別題目
後期火5伊原木大祐特殊講義聖性の哲学的探究
[授業の概要・目的]
ルドルフ・オットーの代表作であり、宗教学の古典でもある『聖なるもの』(1917)は、一方でシュライアーマッハーやリッチュルの神学的思想から、他方で新カント派の認識論から影響を受けていると言われてきたが、実は(いわゆる「宗教現象学」から区別されるべき)哲学的現象学の知見にこの上なく近づいており、その方向から見直しても豊かな着想を含んでいる。このことを最初に看取したのがマックス・シェーラーである。本講義では、この二人による聖性の捉え方から出発し、「情動」・「力」・「非合理性」・「両義性」・「過剰」といった基本的モチーフの分析を中心に、聖なるものの理論的探究へと向かう。 

[授業計画と内容]
初回は導入に当てる。第2回から徐々に本格的議論に入ってゆくが、講義の性質上、各サブトピックに対して【 】で指示した週数を充てる。各々を論じるのに時間が足りない場合は、問題を深く掘り下げてゆく目的で、週数を調整・変更する可能性がある。
1. イントロダクション~「聖」概念の現在【1週】
2. ヌミノーゼ論再考【2週】
3. シェーラーによるオットー批判と現象学的宗教論【3週】
4. 聖の両義性に対するポスト現象学的アプローチ【3週】
5. 俗なる世界との緊張関係【2週】
6. 根本現象としての供犠【3週】
7. フィードバック【1週】
開講期・曜時限教員種別題目
前期水4津田謙治演習教父学の古典的研究を読むII/A
[授業の概要・目的]
この演習の目的は、初期キリスト教における教義史に関する古典的研究を読み、膨大な古代史料の中から教理的主題や教父の特徴などを網羅的に概観するとともに、教義がどのような歴史的展開を示しているかを学ぶことである。この演習では、近代ドイツで教父学を発展させた研究を精読することによって、キリスト教思想研究に必要な文献読解力の向上を目指す。

[授業計画と内容]
今年度の前期では、ハルナックの晩年における主要著作の一つである『マルキオン』を取り上げ、演習を行う。
Adolf von Harnack, Marcion Das Evangelium vom fremden Gott: Eine Monographie zur Geschichte der Grundlegung der katholischen Kirche, 2te Auflage (Leipzig 1924), BKT: Darmstadt,1996.
1. オリエンテーション
2. 宗教史的な諸前提
3. 知られざる異邦の神
4. 混淆主義
5. 使徒的宣教
6. パウロ
7. 救済宗教
8. マルキオンの生涯と影響
9. マルキオンの出発点
10. 律法と福音
11. 世界、律法、創造者からの救済
12. 批評者かつ修復者
13. マルキオン聖書
14. マルキオンの『対立命題』
15. まとめと総括およびレポート等に関する解説
開講期・曜時限教員種別題目
後期水4津田謙治演習教父学の古典的研究を読むII/B
[授業の概要・目的]
この演習の目的は、初期キリスト教における教義史に関する古典的研究を読み、膨大な古代史料の中から教理的主題や教父の特徴などを網羅的に概観するとともに、教義がどのような歴史的展開を示しているかを学ぶことである。この演習では、近代ドイツで教父学を発展させた研究を精読することによって、キリスト教思想研究に必要な文献読解力の向上を目指す。

[授業計画と内容]
前年度の後期に引き続き、古代の教理史に関わる古典的文献から、ハルナックの『教理史教本』を取り上げ、演習を行う。
Adolf von Harnack, Lehrbuch der Dogmengeschichte, Band I, 4te Auflage (Tuebingen 1909), WBG: Darmstadt, 2015.
1.オリエンテーション
2.教義史研究の諸前提
3.福音と旧約聖書
4.ユダヤ教との分離
5.ローマ・ギリシア世界
6.ギリシア精神
7.最初期キリスト教
8.カトリシズム
9.使徒的信仰論
10.イエス・キリストの福音
11.二重の福音
12.終末論
13.メシア主義
14.神の国
15.まとめと総括およびレポート等に関する解説
開講期・曜時限教員種別題目
前期火4伊原木大祐演習Michel Henry, Paroles du Christを読む
[授業の概要・目的]

本演習では、昨年度に引き続き、ミシェル・アンリの遺作『キリストの言葉』(2002)を扱う。本 書は、後期アンリのいわゆる「キリスト教三部作」の最後に位するものであり、相対的に明晰な文体で書かれた啓蒙書でもあるが、宗教哲学的な示唆に富んだ作品として精読に値する。アンリ思想のエッセンスをつかみ取ると同時に、福音書への哲学的アプローチの好例を知る上でも、益が多いと思われる。必要に応じてNestle-Alandの校訂版で原文を確認する。

[授業計画と内容]
第1回 イントロダクション
本演習で扱う著作およびその著者について知っておくべき最低限の事柄を説明する。その後、昨年 度精読した部分のポイントをきちんと取り上げて解説を行うので、今年度初めて履修する学生も臆 することなく参加してほしい。
第2~14回

『キリストの言葉』第二章の途中(原文p.31~)から読み進めてゆく。進度は出席者の語学力に合わせて調整してゆく予定。
第15回 まとめ
読み終えた箇所のふりかえり。議論・質問等の時間とする。
開講期・曜時限教員種別題目
後期火4伊原木大祐演習Max Scheler, Tod und Fortlebenを読む
[授業の概要・目的]
本演習では、マックス・シェーラーの遺稿「Tod und Fortleben」を読み進めてゆく。彼の主著『倫理学における形式主義と実質的価値倫理学』とほぼ同時期に執筆されたと考えられている本論考は、「生死」に対する宗教哲学的アプローチの模範的な実例として、また、ハイデガーやレヴィナスのそれとは根本的に異なった「死」の哲学的分析として、今でもなお精読に値する。その読解を通じて参加者一人一人が自身の思索を深めていくことが期待される。

[授業計画と内容]
第1回 イントロダクション
本演習で扱う著作およびその著者について知っておくべき最低限の事柄を説明する。
第2~14回
「Tod und Fortleben」を1回に2~3頁のペースで読み進めてゆく。
第15回 まとめ
読み終えた箇所のふりかえり。議論・質問等の時間とする。
開講期・曜時限教員種別題目
前期水5杉村靖彦演習西谷啓治「シェリングの絶対的観念論とベルクソンの純粋持続」を読む
[授業の概要・目的] 
このテクストは、西谷啓治が1924年に京都帝國大學文學部に提出した卒業論文であり、10万字以上に及ぶ大作である。後年の西谷の透明な筆致からは想像できない極度に凝縮された文体で書かれ たこの論文には、シェリングとベルクソンについての学術的な吟味に耐えうる研究を提示し、両者を交差しつつ西洋哲学史の中に位置づけるというだけでなく、彼らと対論しつつより根源的な次元 を自前で切り開こうとする西谷自身の思索の原点がある。そしてその背後には、「自覚」から「場所」へと独自の哲学を彫琢しつつあった師西田の存在が見え隠れする。この重層的な成り立ちをもつテクストは、まだ正面から研究されたことはほとんどないが、西谷宗教哲学の出発点として重要な文献であるのみならず、西洋哲学史研究や日本哲学史研究という観点からも第一級の資料である。 
 そうしたテクストの性質を踏まえて、本演習では、そこで論及されるシェリングとベルクソンの著作の原典読解をも組み入れながら多様な角度からのアプローチを試み、参加者の研究的な読解の訓練の場としたい。

[授業計画と内容]
第1回 
導入 テクストを読み進める上で必要な導入的説明を教員が行う。2回目以降の担当者を決める。 
第2回‐14回 
西谷啓治「シェリングの絶対的観念論とベルクソンの純粋持続」は序と13個の節から成るが、1回あたり約1節のペースで読み進める。各回の担当者は担当箇所の内容要約を行うとともに、シェリングかベルクソンのテクストの西谷による参照箇所の翻訳も行う。担当者による報告を材料にして教員が全体を解説し、それをもとに参加者間で意見交換や議論を行う。基本的には、一学期で全体を読み切る予定である。 
第15回 
著作全体を振り返り、教員との質疑応答や出席者間での討議を行う。
開講期・曜時限教員種別題目
後期水5杉村靖彦演習Paul Ricœur, La symbolique du mal, Première partie: Les symboles primaires を読む
[授業の概要・目的] 
ポール・リクール『悪のシンボリズム』は、1960年に『有限性と罪責性』の第2分冊として刊行され、リクールを解釈学的哲学への転じさせた記念碑的著作である。同時にこの著作は、その大部分が聖書や諸文明の神話から渉猟した悪の象徴的・神話的表現の意味解釈に充てられており、リクールが自らの哲学的立場を更新するにあたって、従来の哲学の境界を踏み越え、宗教的表現の生成現場へと深く沈潜したことが見て取れる。
本演習では、昨年度後期に続いて、この著作の第一部「一次的象徴:穢れ・罪・負い目」の重要箇所を抜粋して精読し、リクール解釈学の原点における哲学と宗教の交差の有りようを検討することによって、宗教哲学の可能性を探究するための材料としたい。

[授業計画と内容]
第1回 導入
テクストを読み進める上で必要な予備知識の解説を行う。2回目以降の担当者を決める。
第2回‐14回
リクール『悪のシンボリズム』第1部「一次的象徴:穢れ・罪・負い目」の重要箇所を抜粋し、1回当たり2頁程度のペースで精読していく。
第15回
読み終えた箇所全体を振り返り、疑問点等について出席者全員で討議を行う。
開講期・曜時限教員種別題目
後期火3,4James W. Heisig演習Ethics and the Kyoto Philosophical Tradition
[授業の概要・目的]
Ethics has to do with the ethical subject, but its subject matter extends beyond the subject to include human society and the natural world. Moreover, although ethics does not stop at reflection on ethics but must open out into ethical action, reflection whether on the ethical subject or on the needs of the wider world is also part of ethical action.
These questions will be look at critically in the thinking of four thinkers from the same Kyoto philosophical tradition: Nishida, Tanabe, Nishitani, and Ueda. The aim will be not only to look at the insights and oversights of each of these thinkers with regard to ethics, but also consider how their tradition may be given new life by addressing the questions they left open.

[授業計画と内容]
The following topics will be taken up in order. The number in brackets refers to the number of lectures devoted to each.
1 Fundamental questions of ethics and ethical theory [1]
2 Nishida’s view of ethics [3]
3 Tanabe’s view of ethics [3]
4 Nishitani’s view of ethics [3]
5 Ueda’s view of ethics [3]
6 Ethics in the Kyoto philosophical tradition for today
開講期・曜時限教員種別題目
前期木2根無一行講読John D. Caputo, On Religion を読む 1
[授業の概要・目的]
現代アメリカを代表する大陸哲学系の宗教哲学者John D. CaputoのOn religion(第二版、2019年)を読む。ハイデッガー研究から出発し、デリダから決定的な影響を受けた自らの仕事を「ポストモダン神学」とも規定するカプートの思索は、そもそも「現代」をどのように捉えるかということも含めて、現代を生きる我々が「宗教」と「哲学」を考えていくための手がかりを、いい意味でも悪い意味でも、与えてくれると思われる。

[授業計画と内容]
第1回 導入
本講読の進め方を確認し、著者とテキストに関する基本的な事柄の説明等を行う。
第2~14回
テキストの読解と議論等。
第15回
まとめ
開講期・曜時限教員種別題目
後期木2根無一行講読James H. Cone, God of the oppressed(1975) を読む 2
[授業の概要・目的]
前期に引き続き、現代アメリカを代表する大陸哲学系の宗教哲学者John D. CaputoのOn religion(第二版、2019年)を読む。ハイデッガー研究から出発し、デリダから決定的な影響を受けた自らの仕事を「ポストモダン神学」とも規定するカプートの思索は、そもそも「現代」をどのように捉えるかということも含めて、現代を生きる我々が「宗教」と「哲学」を考えていくための手がかりを、いい意味でも悪い意味でも、与えてくれると思われる。

[授業計画と内容]
第1回 導入
本講読の進め方を確認し、著者とテキストに関する基本的な事柄の説明等を行う。
第2~14回
テキストの読解と議論等。
第15回
まとめ
開講期・曜時限教員種別題目
前期木2安部浩演習シェリングの自由論
[授業の概要・目的]
カント、フィヒテ、ヘーゲル等の哲人。ハイドン、モーツァルト、ベートーヴェン等の楽聖。これらの巨人に伍して空前絶後の精神の運動を牽引しつつ、百花繚乱の「ゲーテの時代」を駆け抜けた早熟の天才がいた。F.W.J. シェリングである。
彼が遺した数多の著述・講義録の中でも、『人間の自由の本質』こそは蓋し最重要作の一つである。では本著作において、「哲学における最内奥の中心点」と自らが見做す「必然性と自由の対立」なる問題にシェリングはいかなる仕方で挑むのか。「ドイツ観念論の形而上学の頂点」(ハイデガー)と評される当該著作を冒頭から繙読し、議論を戦わせていくことで、われわれは、自由、汎神論、悪、無底等をめぐる問題系の考察に努めることにしよう。そしてそれにより、語学・哲学上の正確な知識、及び論理的思考力に基づく原典の厳密な読解力を各人が涵養すること、そしてこの読解の過程において浮上してくる重要な問題をめぐる参加者全員の討議を通して、各人が自らの思索を深化させていくことが、本演習の目的である。

[授業計画と内容]
原則的には毎回、予め指名した二名の方にそれぞれ、報告と演習の記録を担当して頂くことにする。ここに各回に扱う予定である原典の範囲を記すが、授業の進度については出席者各位の実力を勘案して修正することもある。
以下、内容の梗概に続き、括弧内に教科書の頁番号を(また適宜、斜線を付して行番号をも)示す。
1. ガイダンスと前期の復習
2. 「悪の現実性の演繹・その3」(52/30-55/22)
3. 「悪の現実性の演繹・その4」(55/23-59)
4. 「悪の現実性の演繹・その5」(60-63/18)
5. 「悪の現実性の演繹・その6」(63/19-66/4)
6. 「神の自由・その1」(66/5-70/29)
7. 「神の自由・その2」(70/30-/75/10)
8. 「神の自己啓示の目標ー愛の全一性・その1」(75/11-79/17)
9. 「神の自己啓示の目標ー愛の全一性・その2」(79/18-82/8)
10. 「神の自己啓示の目標ー愛の全一性・その3」(82/8-84/31)
11. 「神の自己啓示の目標ー愛の全一性・その3」(84/32-87)
12. 辻村公一「無底ーシェリング『自由論』に於ける」
13. 薗田坦「無底・意志・自然ーJ.ベーメの意志-形而上学について」 14. 総括と総合討論
15. フィードバック
開講期・曜時限教員種別題目
前期火2竹内綱史演習ニーチェ『悲劇の誕生』を読む
[授業の概要・目的]
本演習では、昨年度に引き続き、ニーチェの哲学上の処女作『悲劇の誕生』(1872年)を精読する。同書は古典文献学の本として書かれてはいるが、当時の文化状況に一石を投じる意図のもとさまざまな問題意識が詰め込まれており、すでにニーチェ哲学の中心的な発想がすべてそろっていると言っても過言ではない。本演習ではその精読を通じて、ニーチェの問題意識を理解するとともに、後に「ニヒリズム」として論じられるようになる問題について検討したい。

[授業計画と内容]
第1回 イントロダクション
『悲劇の誕生』という著作の概要や背景、前年度までの講読箇所の議論について解説する。基本 的な訳書や概説書・注釈書などを紹介し、授業の進め方について周知する。
第2回~第14回 『悲劇の誕生』精読
『悲劇の誕生』を前年度の続きから精読する。テクストの一語一句について全員で議論する。毎 回プロトコル担当者を決め、授業の最初に前回のプロトコルを発表してもらいそれについて検討し てから、続くテクストの精読を行う予定。
開講期・曜時限教員種別題目
後期月5鬼頭葉子特殊講義近現代キリスト教思想
[授業の概要・目的]
20世紀の神学者パウル・ティリッヒは『キリスト教思想史』の冒頭において、キリスト教的思索の背後には、宗教的生自体が横たわっており、宗教教的生においては思索が必然的役割を果たしていると述べ、キリスト教思想と哲学思想とを並行して語っている。事実、哲学とキリスト教神学とは古代から現代に至るまで、相互に影響を与えあってきた。本授業は、宗教改革以降のキリスト教神学と哲学を比較しつつ、どのような影響関係にあったのか理解することを目的とする。

[授業計画と内容]
以下のテーマを中心にして進めていく予定であるが、受講者の関心によっては適宜、順序や内容などを変更する場合もある。
1. 宗教改革と近代
2. プロテスタント正統主義、敬虔主義
3. イギリス経験論と理神論(ロック、ヒューム、ハーバート)
4. 啓蒙主義と宗教(カント)
5. ドイツ観念論と宗教(ヘーゲル、シェリング)
6. 近代キリスト教神学の誕生(シュライアマハー)
7. 哲学からのキリスト教批判(ニーチェ、フォイエルバッハ)
8. 実存と宗教1(キルケゴール)
9. 宗教学の誕生(ミュラー、ヴェーバーほか)
10. 自由主義神学(リッチュル、ハルナック)
11. 宗教史学派(トレルチ、ヴレーデ、ヴァイス)
12. 下部構造と宗教(マルクス)、宗教社会主義
13. 弁証法神学(バルト、ブルンナー)
14. 実存と宗教2(ブルトマン、ハイデガー)
15. 存在論的神学/哲学的神学(ティリッヒ、ヤスパース)
開講期・曜時限教員種別題目
金4・5(隔週)杉村靖彦・伊原木大祐演習宗教哲学基礎演習B
[授業の概要・目的]
宗教哲学の基本文献を教師とチューター役の大学院生の解説を手がかりに読み進めていくことで、より専門的な研究への橋渡しになるような知識と思考法の獲得を目指す。4回生以上の宗教学専修在籍者にとっては、卒論の中間発表の場ともなる。
宗教学専修の学部生を主たる対象とするが、哲学と宗教が触れ合う問題領域に関心をもつ2回生、および他専修学生の参加も歓迎する。[授業計画と内容]宗教哲学の基本文献といえる著作や論文を選んで各回の授業に割り振り、事前に出席者に読んできてもらう。そして、毎回チューター役の大学院生の解説を踏まえて、教員の司会進行の下で、質疑応答と議論を行っていく(その際、履修者には特定質問者の役割を少なくとも1回は担当してもらう)。また、卒論の中間発表の際には、論述の仕方や文献の扱い方なども指導し、論文の書き方を学ぶ機会とする。
隔週の授業のため、全7回として各回のテーマを記しておく。なお、どのような文献を取り上げるかは、前期の「宗教哲学基礎演習A」の様子を見て決めることにする。それによって、各回で取り上げる文献の種類も、以下の記したものとは異なる可能性もある。
第1回  オリエンテーション・卒業論文の中間発表
第2回  宗教哲学の基本文献(近代フランス)の読解・解説・考察
第3回  宗教哲学の基本文献(近代ドイツ)の読解・解説・考察
第4回  宗教哲学の基本文献(近現代英米)の読解・解説・考察
第5回  宗教哲学の基本文献(現代フランス)の読解・解説・考察
第6回  宗教哲学の基本文献(現代ドイツ)の読解・解説・考察
第7回  宗教哲学の基本文献(京都学派の哲学)の読解・解説・考察
開講期・曜時限教員種別題目
金4・5(隔週)杉村靖彦・伊原木大祐演習Ⅱ宗教学の諸問題
[授業の概要・目的]
演習参加者が、宗教学の諸問題のなかで各人の研究するテーマに即して発表を行い、その内容をめぐって、全員で討論する。討議のなかで、各人の研究を進展させることが目的である。[授業計画と内容]参加者が順番に研究発表を行い、それについて全員で討論する。各人の発表は2回にわたって行う。即ち、発表者は1時間以内の発表を行い、続いてそれについて討論する。発表者はその討論を受けて自分の発表を再考し、次回に再考の結果を発表して、それについてさらに踏み込んだ討論を行う。したがって、1回の授業は前半と後半に分かれ、前半は前回発表者の2回目の発表と討論、後半は新たな発表者の1回目の発表と討論となる。
第1回 オリエンテーション、参加者の発表の順番とプロトコールの担当者を決定。
第2回ー8回 博士課程の院生による発表と全員での討論。
第9回-14回 修士課程の院生による発表と全員での討論。
第15回 総括。