今年度の講義シラバス

日本哲学史専修ウェブサイト 今年度の講義シラバス

学部(前期)

系共通科目 (日本哲学史) (講義)

担当:上原 麻有子(日本哲学史専修 教授)
題目:日本哲学史講義1

授業の概要・目的
日本哲学史を①西田幾多郎、②近代日本哲学の発展から京都学派の哲学への二部に分けて日本哲学の形成過程を概観し、さらに、これまで論じられてきた主要問題を通して日本哲学のあり方、意義について検討する。このようにして日本哲学史についての理解を深めることが、授業の目的である。
到達目標
日本哲学における近代初頭から京都学派(第二次世界大戦まで)の主要テーマ、主要問題を理解し、さらにそれを自ら批評することを目標とする。

日本哲学史(基礎演習)

担当:上原 麻有子(日本哲学史専修)およびゲストスピーカー
題目:「東京学派」の哲学

授業の概要・目的
「京都学派」に対して、「東京学派」は存在するのか、あるいはしたのか。日本哲学の研究者の間で、近年この問題は取り上げられ議論されるが、明確な答えはない。この授業ではその議論の概要を踏まえた上で、廣松渉、大森荘蔵、坂部恵という現代の代表的な哲学者の思想に焦点を当てて、その特徴を明確にすることを目的とする。先行研究によると、この哲学者らには「京都学派」の思想が摂取され、それが反映されてもいるという。それが実質的に京都から東京へと継承されていたのかを確認すると共に、日本の近現代の哲学史の展開という観点から、三人の哲学者の思想の意義を探ることにする。また「東京学派」は形成されたのか、についても検討する。
この授業は、ゲストスピーカー2名が加わり、3名の講師が担当する。
到達目標
・廣松渉、大森荘蔵、坂部恵の哲学のテキストを読み、どのような思想が展開されたのかを理解する。
・「東京学派」という集団を仮に想定し、「京都学派」が存在したことの意義を確認し、また日本の哲学における、これまでの研究の哲学史的意義を確認する。

学部・大学院共通(前期)

日本哲学史(特殊講義)

担当:上原 麻有子(日本哲学史専修 教授)
題目:下村寅太郎の哲学―精神史から掘り起こす科学と芸術の交差

授業の概要・目的
西田幾多郎や田辺元の弟子として、かつて京都大学文学部で哲学を学んだ下村寅太郎の哲学は、精神史からさまざまな学問を掘り起こし明確化するという方法をとるものであった。数学哲学、科学哲学から出発した下村は、その後、日本におけるライプニッツ研究の第一人者となり、さらにイタリア旅行を機にルネサンス研究、ダビンチ研究、モナリザ研究へと哲学研究の幅を深めつつ広げ、晩年にはブルクハルトの研究をおさめた。また西田幾多郎の哲学の編集、全集出版にも多大な尽力をそそいだ。講義では、このような下村のダイナミックに展開した哲学の全体をつかみ、その上で、モナリザ研究を取り上げ科学と芸術が交差する彼の哲学的研究手法を明らかにする。
到達目標
・未だ研究の進んでいない下村の哲学の思想の主要な部分を学ぶ。
・日本における科学哲学、ライプニッツ哲学のパイオニアである下村の哲学を、日本の哲学史の中に位置づけ、検討する。
・モナリザの表情の哲学的分析を、下村に従って学ぶ。

日本哲学史(特殊講義)

担当:大河内 泰樹(西洋哲学史専修 教授)
題目:近代哲学古典講読

授業の概要・目的
この授業では、講義担当者の翻訳にもとづいて、ヘーゲルの『精神の現象学』(1807)について講義する。扱うのは「宗教章B」「芸術宗教」である。ヘーゲルは、宗教章において意識・自己意識・理性という『精神現象学』のそれまでのプロセスそのものを宗教という形態において辿り直しながら、それまで断裂していた意識の諸形態を「想起=内化」を通じて、一つの歴史として描き直そうとするプロセスである。その中でも「芸術宗教」は、古代ギリシアの宗教を主題とすることで、制作を通じての自己意識の形成を問題とする。それは宗教の一形態として芸術を扱いながらも、のちに美学講義で展開されることになるヘーゲルの芸術論・美学の出発点でもあることから、ヘーゲルの美学についても適宜論じてゆく。
到達目標
古典的テキストに取りくむことを通じて、テキスト研究としての哲学史研究の基本的な姿勢を身に付ける。
ヘーゲルの哲学的主張を理解した上で、それを関連する哲学史的・現代的問題の文脈において捉え返し、論じることができる。

日本哲学史(特殊講義)※集中講義

担当:DAVIS,Bret Wingfield(非常勤講師)
題目:日本哲学とは何か

授業の概要・目的
前近代及び近代の日本思想・哲学のいくつかの代表的テキストを取り上げ、日本思想・哲学の特徴及びその多元性を吟味する、また「日本哲学」の定義と範囲そのものを問い直すことが本講義の目的である。「西洋独占的哲学観」とでもいうべき前提が、現在どのように問われているのかをみたうえで、前近代の「日本思想」と近代の「日本哲学」の対立はどのように問いなおされるべきかを検討する。また、「日本哲学」が民族中心的な「日本人論」ではなく、「世界哲学への貢献」としてどのように理解されうるかについても検討する予定である。
到達目標
本講義の第一の目標は、日本思想・哲学史を概観し、その主要ないくつかの理論と議論を理解することはである。第二の目標は、「日本哲学とは何か」という問いの複雑さと、その今日的な重要性を吟味することである。

日本哲学史(特殊講義)※集中講義

題目:ライプニッツとカント
担当:城戸 淳(東北大学文学部 教授)

授業の概要・目的
ドイツのバロック期を代表する哲学者であるライプニッツは、近代では最大規模といえる形而上学を構想したが、その思想的遺産はヴォルフやバウムガルテンによって通俗化されて、18世紀の啓蒙期のドイツ講壇哲学へと受け継がれ普及した。カントは、このライプニッツ=ヴォルフ哲学の伝統に育まれて、しかしついにはそれを超克する哲学的努力のなかで、みずからの批判哲学を構築したのである。
この講義では、ライプニッツ哲学の骨格を把握するとともに、その継承と超克という比較哲学史の観点からカント哲学を考察する。
到達目標
ライプニッツとカントの学説を学ぶとともに、両者の哲学的な対立構造を理解する。

学部(後期)

系共通科目(日本哲学史)(講義)

担当:上原 麻有子(日本哲学史専修 教授)
題目:日本哲学史講義2

授業の概要・目的
京都学派とその周辺の哲学者の思想を、いくつかのテーマを追う形で考察することが、この授業の目的である。さらに、講義で考察する日本哲学の問題が、私たち各自の経験においてどのような意義をもつのか、その経験とどのように結びつき得るのかについても検討する。
到達目標
テーマについて理解を深め、さらにそれを自ら批評することを目標とする。

日本哲学史(基礎演習)

担当:山本 舜(非常勤講師)
題目:前期西田哲学の展開(講読)

授業の概要・目的
本演習では、西田幾多郎の『善の研究』(1911年)および、その後の『自覚に於ける直観と反省』(1917年)に至る手前までの諸々のテクストを講読し、根本概念である「純粋経験」から「自覚」の着想に至る基本的な思索の推移を検討する。西田哲学にアプローチしようと思う場合には、どういう関心を端緒とするのであれ、『善の研究』をまず通っておくことが望ましい。そこで提唱される「純粋経験」は、根本方針としては晩年に至るまで一貫して存し続けるからである。だがまた西田哲学全体を見通したときには、同時にそこに留まらない概念の変遷があることも考慮しておかなくてはならない。このような観点から、基礎文献である『善の研究』と、その後同時代の西洋哲学を急速に吸収していく時期の論文を併せて講読することで、西田哲学の基本像と、その後の変遷を同時に視野に入れて理解することを本演習の到達目標とする。
到達目標
(1)テクストに関する基礎知識とその周辺の関連知識を習得する。
(2)資料作成や議論を通じて内容の理解を深めると共に、日本哲学史の基礎文献を読み解く上での技能を身につける。

日本哲学史(演習)

担当:満原 健(非常勤講師)
題目:西田幾多郎『自覚に於ける直観と反省』を読む

授業の概要・目的
新カント派やフッサールら数多くの人物の哲学が頻繁に援用される『自覚に於ける直観と反省』は、彼らに対する西田幾多郎の立ち位置を知るには格好の論文と言える。しかし、問題の解決への見通しが立たないままに、さまよいながら執筆が続けられたこの著作は、難解で知られる西田の著作群のなかでも特に理解が難しい。この演習では、混沌とした西田の記述を整理し、参照される哲学者の主張を押さえながら読解を進めることで、当時の現代哲学に対して西田が樹立しようとした哲学の独自性と意義を見定めることを目指す。
到達目標
1.西田幾多郎のテクストの読解作業を通して、哲学書を理解するための考え方や方法、技術を身につける。
2.演習での報告・発表を通して、自分の考えを他の人に明確に伝えるための方法、技術を身につける。
3.参加者と講師による議論を通して、生産的で建設的な議論をするための方法を身につける。

学部・大学院共通(後期)

日本哲学史(特殊講義)

担当:上原 麻有子(日本哲学史専修 教授)
題目:大正期の日本哲学の展開-社会との関係

授業の概要・目的
大正時代(1912-1926年)は、日本哲学の一つの重要な展開があった時期と見ることができる。西洋哲学の受容の観点からは、カント哲学、新カント学派の哲学の摂取が大変盛んに行われた。研究の関心は自我、自己という内面の問題に向けられた。一方で大正デモクラシーと呼ばれる民衆による社会運動の広がりも、この時期の特徴である。一般には、哲学者は社会へ関心を向けることなく内省に没頭したと言われている。しかし、社会運動の担い手、あるいは社会問題を指摘するジャーナリズムは、哲学を無視していたのではなく、むしろそこから概念・用語を借用していたのではないか。さらに講義では、尊厳、および関連する人権、民権、自由という語に焦点を当て、哲学と社会の関連、交渉を探ることにする。
到達目標
・大正期という限定された時期の日本哲学の展開がどのようなものであったかを学ぶ。
・この時期の哲学と社会の関係という、新しい視点の問題に取り組み検討する。
・尊厳、人権、民権、自由という用語・概念の観点から日本哲学の当時の状況を探る。

日本哲学史(特殊講義)

担当:大河内 泰樹(西洋哲学史専修 教授)
題目:近代哲学古典講読

授業の概要・目的
この授業では、講義担当者の翻訳にもとづいて、ヘーゲルの『精神の現象学』(1807)について講義する。扱うのは「宗教章C」「啓示宗教」および「絶対知」である。「啓示宗教」において、『精神現象学』のそれまでのプロセスを「想起=内化」するという宗教章の課題は完成し、「絶対知」へと接続することになる。それは、キリスト教を最高の宗教として位置づけると同時に、最後の宗教として宗教的表象を解体し、宗教という形式そのものを乗り越えるプロセスでもある。こうしたヘーゲルの宗教観、キリスト教観の問題点も含めて議論を進めていく。それはそれによって到達される「絶対知」そのものの検証ともつながるはずである。
到達目標
古典的テキストに取りくむことを通じて、テキスト研究としての哲学史研究の基本的な姿勢を身に付ける。
ヘーゲルの哲学的主張を理解した上で、それを関連する哲学史的・現代的問題の文脈において捉え返し、論じることができる。

通年

日本哲学史(卒論演習)

担当:上原 麻有子(日本哲学史専修 教授)
題目:卒論演習

授業の概要・目的
授業の目的は次の通りとする。
①日本哲学の分野における論文の書き方(表現、論証、資料の調査・活用など)を習得する。
②研究報告を行い、口頭による発表・議論の仕方を習得する。
③卒業論文を作成する。
到達目標
日本哲学に関する卒業論文、つまり学術論文を書くことが到達目標であるが、具体的には、特に次のような点を習得する。
・日本哲学の一次文献を読みこなす。
・論文のテーマとなるような問題を設定する。
・学術的なスタイルで、論旨の明快な文章を書く。
・参考文献を適切に使用し、引用、その批評・解説が適切にできる。
・論理的で整合性のある論文の構成ができる。

日本哲学史(演習Ⅱ)

担当:上原 麻有子(日本哲学史専修 教授)
題目:日本哲学の諸問題

授業の概要・目的
この授業では、日本哲学の主要概念やテーマの理解を深め、また諸問題を自ら新しく掘り起こすことを目的とする。そのために、テキストの読解、研究の口頭発表という二つの方法によって訓練を行う。前期の読解の部では、英語で執筆された文献も取り入れ、同一概念の二言語による説明を理解することで、その本質的な意味や問題点を探究することを目指す。
到達目標
授業の到達目標は以下の通りである。
・近代日本の哲学と京都学派およびその周辺の哲学者のテキストを正しく理解し、概念、論旨などを詳細に解説、批評できる。
・読解訓練を自らの研究論文の執筆に反映させ、適切な学術論文の書き方を身につける。
・口頭による研究発表の仕方を身につける。
・英語で執筆された日本哲学の文献を読み、英語による議論の仕方を身につける。