4・5限:「Documentary Traditions: Ecocinema(ドキュメンタリー映画の手法:エコシネマ)」週間スケジュール ※修士課程1回生(後期)大学院受験に向けて取り組んだことを教えてください学部での成績、卒業論文、二つの外国語の資格、そして研究計画書を提出する必要がありました。研究計画書にはとくに時間をかけました。研究内容と研究計画をなるべく具体的に記述するだけでなく、なぜ自分の研究テーマをこの研究科・専攻で研究したいのか、しなければならないのかを記述することが難しかったです。研究計画書は研究を始める前に研究の意義を書く、という矛盾を体現する書類なのですが、書いていると自分の研究計画もおのずと洗練されていくので、根気よく書きました(大学院に入ってからも幾度と研究計画書を書かないといけない機会があります)。二次試験の口頭試問も、基本的には研究計画書の内容について質問されるので、研究の意義や具体的な研究の流れを具体的に言えることも重要です。研究テーマについて教えてください舞台芸術のアーカイブについて研究しています。修士論文では、アメリカの演劇史家シュテファン・ブレヒトによる1960年代から70年代のニューヨークの前衛演劇のアーカイブプロジェクトを検討します。舞台芸術は一回性の芸術と言われるように、同じ上演をそのまま再現することはできません。したがって、すでに上演された作品を見るには、それが何らかの形で記録されたものを見ることになります。アーカイブは単に作品を記録し保存する行為ではなく、何を記録し、何を記録しないかという決定をめぐる政治的な行為でもあります。加えて、同じ作品でも記録するメディアによっても、アーカイブされた作品を通じた経験は異なります。シュテファン・ブレヒトはおもに言語を使ってニューヨークの前衛演劇をアーカイブしましたが、文章での記録や批評だけでなく、日記や詩を書いたり、自身もパフォーマーとして作品に出演したりしていました。さまざまな立場を横断しながらアーカイブをおこなったブレヒトは、アーカイブする主体とアーカイブされる対象という境界を曖昧にします。アーカイブを通じて形づくられてきた舞台芸術の複雑な歴史に興味があります。夢や進路について教えてください私は特段、夢や目標を掲げる人間ではないのですが、常にいろんなことをやっていたいと思っています。学部を卒業してから大学院に進学するまで、二年弱のあいだ、働いてみたりこれまで自分がやってこなかったことをしてみました。これからは自分の興味あることを研究していきたいのですが、同時に演劇をやってみたり、風通しのよい人生をこれからも送っていきたいです。月火水木金研究・授業の準備研究・授業の準備4・5限:「Global Neorealism(グローバル・ネオレアリズモ)」3限:「ディドロ『俳優についての逆説』を読む」、4・5限:「Queer Film Theory and Criticism(クィア・シネマと批評)」プログラムの一環で、フランスのストラスブール大学で発表したときの写真。舞台に出演したときの集合写真。主人公の妹が好きな医者の息子を演じました。ロームシアター京都の中庭で見た劇団どくんごのテント芝居。圧巻でした。文学部棟と法経済学部棟の間のいわし雲。お気に入りの写真です。未来の文学研究科生へのメッセージを一言ヴァルター・ベンヤミンが「批評という形式は、[...] 作品のまさにアクチュアルな局面に決然としてかかわってゆけばゆくほど、形式としてそれだけますます厳密なものになる」と書いていますが、研究においても皆さんの研究対象がどのような歴史的・政治的な現実に置かれているのか、研究者として丁寧かつ決然と向き合いたい人には適当な環境だと思います。ただ研究のみに没頭するのではなく、いろんなコミュニティに逃げ場をつくっておくとよいと思います。印象に残る出来事を教えてください大阪の劇団の舞台に出演しました。これまでパフォーマーとしてパフォーマンスに参加したことはあったのですが、俳優として舞台に立つことははじめてでした。オーディションを受け、約3ヶ月の稽古に参加し、80人ほどの観客の前で演じました。いろんな人と同じ作品をつくりあげることの楽しさだけでなく、この経験が自身の研究に生かせるのかもしれないと感じました。京都や大阪にはたくさんの小劇場があり、毎週のように演劇やパフォーマンス、ダンスなどの上演があり、刺激になっています。国際連携文化越境専攻修士 2回生石川 祥伍 さんなぜ京都大学大学院文学研究科に進学しようと思ったのですか私は文学研究科の中でも、国際連携文化越境専攻というところに所属しています。この専攻は修士二年目にドイツのハイデルベルグ大学に一年間留学するジョイントディグリープログラムです。この専攻の特徴は「越境文化」という方法論を基礎として研究を行う点です。この方法論は、常に固定されたものとして語られる現象や概念を、その前提から批判することで、それらの動き(越境)を記述し分析する手法のことです。たとえば、私たちが能や歌舞伎を「日本の伝統的な舞台芸術」と表現するとき、ここで言う「日本」とは何を指し、能や歌舞伎は何をもって「伝統的」なのか。このような概念が前提とする枠組みを批判的に検討しながら、研究対象がどのように構築されたかを研究します。この方法に基づいて私が研究する演劇を見ると、戯曲や上演の分析にとどまらず、演劇という概念がどのように形づくられ、さまざまな人々によって実践されているのか、という視座を与えてくれます。特定の方法論に根ざしたこの専攻に関心を抱き、進学することにしました。文学研究科ってどんなところですか私の専攻では、授業やゼミは多くても10人ほどの学生で行われ、教授が一方的に教えるというより、学生同士がある作品や論文を中心に議論する形式がほとんどです。授業を履修する学生は必ずしも私と同じ分野を学んでいるわけではないので、他の分野の学生からの指摘にいつも刺激を受けています。私の同期は日本、中国、韓国、イギリスのバックグラウンドをもっていて、みんなでよくボードゲームをしたりお互いの誕生日を祝ったりしています。どんな学生生活を送っていますか週に5〜6コマ入っている授業とゼミ以外の時間は、授業の課題に取り組んでいます。多くの授業は英語で行われるため、数百ページの英語の論文や本を読み込むのには少し時間がかかります。授業後は、教授や学生と飲みに行く機会が多く、授業内容やそれ以外のことをざっくばらんに話せるのが楽しいです。私の指導教官は映画研究を専門にしているので、ゲストとして授業に参加した映画監督の人たちと話すこともしばしばあります。授業と研究以外では、演劇・美術・映画鑑賞、古本屋巡り、批評の執筆、演劇の稽古、バイトに時間を費やしています。こう書くと、研究していないのではないかと思われるのですが、一見研究と関係ないことも研究につながってきたりする場合があります。研究しないことも研究することと同等以上に大事ですからね。45
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