増田 真 教授

○現在の研究テーマと研究活動の概要

従来、あまり研究されていなかったルソーの言語論・音楽論を、ルソーの思想全体の中に位置づけることをめざす。これまで、ルソーの言語論はその政治思想(特に人間論)と深く関係しており、同時代の百科全書派から影響を受けつつ、その言語論に対する反論として書かれたものであることを明らかにしてきた。ルソーにとって、言語は人間特有の道徳的感情から生まれたものであり、そのような性質を受け継いだ言語は社会において道徳的義務と芸術的快楽を融合する手段となるはずである。ルソーの言語論に関するこの研究は、政治における言語や、ルソーにおける文学創造、さらにはこの時代における言語に関する議論の意味についても重要な視点を与えてくれるはずである。

○研究成果の公刊

●著書・編書

『フランス文学史』、共著、田村毅、塩川徹也編著、東京大学出版会、(1995年11月)

『はじめて学ぶフランス文学史』(共著、横山安由美、朝比奈美知子編著)、ミネルヴァ書房、(2002年)

●論文

«Musique et société- Anthropologie et théorie musicale chez Jean-Jacques Rousseau -», Etudes de langue et littérature françaises, Société Japonaise de Langue et Littérature Françaises, nº. 60, pp. 57-69、(1992年—月)

«Métaphores et notions morales – Rousseau contre la théorie sensualiste de l’origine du langage », Equinoxe nº.9, pp. 21-38、(1992年—月)

「自己弁護から書くことの快楽へ -自伝文学の誕生」、塩川徹也編 『フランス文学 -中世から現代まで-』放送教育振興会、pp. 80-89 、(1994年—月)

「哲学者とならず者 -啓蒙の光と影」、塩川徹也編 『フランス文学 -中世から現代まで-』放送教育振興会、pp. 90-99、(1994年—月)

「立法者という奇蹟 -ルソーにおける言説の権威の問題-」、『言語文化』(一橋大学語学研究室)第31号、pp. 31-49、(1994年12月)

「十八世紀フランス思想における女性論 -モンテスキューとルソーにおける「自然」の両義性-」、『人文科学研究』(一橋大学)第三十三号、pp. 90-115、(1996年—月)

「ルソーにおける言語論と政治思想 -法の概念との関連を中心に-」、『姫路法学』第二十号、pp. 83-148、(1996年11月)

«La diversitoriginelle des langues et des siciétés dans l’Essai sur l’origine des langues»Etudes Jean-Jaques Rousseau nº 2, 1988, 87-109.

«Lois et langage – Linguistique et politique chez Jean-Jacques Rousseau-» Thèse de doctorat, Universitde Paris IV, soutenue en mars 1991.

「ルソーにおける言語の起源と人間の本性-『人間不平等起源論』と『言語起源論』-『仏語仏文学研究』(東京大学仏語仏文学研究会)第7号、1991、p.3-23.

«La rhétorique de la digression chez J.-J. Rousseau», Equinoxe no 17/18, pp. 1-10、(2000年—月)

「ディドロにおける狂気の美しさ」、『フランス文学における心と体の病理 -中世から現代まで-』平成8-11年度科学研究費補助金研究成果報告書、研究代表者吉田城、pp. 25-48、(2000年3月)

«Nation et universalitdans la théorie musicale de Rousseau», Robert Thiéry (prés.) , Jean-Jacques Rousseau, politique et nation. Actes du IIe colloque international de Montmorency (27 septembre – 4 octobre 1995), Champion, pp. 371-385、(2001年—月)

●翻訳

「日本におけるルターの亡霊」、ジャック・プルースト著、『思想』第888号、pp. 103-116、(1998年6月)

「ルソーの『対話』への序文」、ミシェル・フーコー著、『ミシェル・フーコー思考集成』第1巻、筑摩書房、pp. 213-239、(1998年11月)

「無言の歴史 -カッシーラー『啓蒙主義の哲学』の仏訳に寄せて-」、ミシェル・フーコー著、『ミシェル・フーコー思考集成』第2巻、筑摩書房、pp. 373-378、(1999年3月)

『幸福な国民またはフェリシー人の政体』、ル・メルシエ・ド・ラ・リヴィエール著、岩波書店、「ユートピア旅行記叢書」第15巻、pp. 133-483、解説 pp.503-518、(2000年6月)

●その他

<書評>« Jean-Jacques Rousseau, Essai sur l’origine des langues », éditioncritique par Jean Starobinski, Gallimard, coll. «Folio Essais»,1990. 284p., Etudes Jean-Jacques Rousseau no 4, 1990, p.282.

ブーガンヴィル『世界就航記』、山本淳一訳、岩波書店、「17・18世紀大旅行記双書」第二巻、1990、v+439+9p.、『日本18世紀紀学会年報』第6号、p.31-32、(1991年)

<書評>« Jean-Jacques Rousseau, Essai sur l’origine des langues », éd. J. Starobinski, Gallimard, Folio, 1990, 284 p.; Geoffrey Bennington, Dudding. Des noms de Rousseau, P., Galilée, 1991, 165 p.、『日本18世紀学会年報』第7号、1992、pp. 60-61、(1992年6月)

<書評>« Jean-Pierre Seguin, L’Invention de la phrase au XVIIIe siècle.» Contribution à l’histoire du sentiment linguistique français. Paris-Louvain, Peeters, 1993, 480 p.、『日本18世紀学会年報』第11号、ppp. 64-65、(1996年7月)

「<事典項目>「カラス事件」、「観念学派」、「天才」、「ブフォン論争」」、『世界文学大辞典』事項編、平凡社、(1997年—月)

<書評>« Jean-Jacques Rousseau, Œuvres complètes V. Ecrits sur la musique, la langue et le théàtre. » Gallimard, Bibliothèque de la Pléiade, 1995, cccvi+1928 p.、『日本18世紀学会年報』第12号、p. 65-66.、(1997年7月)

<書評>« Georges Benrekassa, Le Langage des Lumières.» Concepts et savoir de la langue. PUF, 1995, 353 p.、『仏文研究』(京都大学フランス語学フランス文学研究会)第28号、pp. 159-162、(1997年9月)

「<コラム>「啓蒙の衣を纏った絶対王政」」、『週間朝日百科 世界の文学』第6号、「ヨーロッパII ヴォルテール、ルソーほか」朝日新聞社、(1999年8月)

○その他の研究活動

●学会報告

「社会芸術としての音楽- ルソーにおける人間論と音楽論―」、日本フランス語フランス文学会1990年秋季大会(東北大学)

« Nation et universalité dans la théorie musicale de Rousseau » IIe Colloque international Rousseau(第2回ルソーシンポジウム、フランス、モンモランシー)、(1995年9月)

「啓蒙研究の現在(フランス)」、日本18世紀学会第18回大会、東京、慶應義塾大学、(1996年6月)

« La rhétorique de la digression chez J.-J. Rousseau » Colloque franco-japonais de Kyoto “Ecriture / Figure”, Institut franco-japonais du Kansai(京都日仏シンポジウム「エクリチュール/フィギュール」、関西日仏学館、(1998年11月)

●学術講演

「18世紀フランス思想における女性論-モンテスキューとルソーを中心に-」、一橋大学公開講座「ルネサンスと近代における人間像 -女性像を中心に-、(1994年9月)

科学研究費・寄付金等による研究

「フランス文学における心と体の病理 -中世から現代まで-」、文部省科学研究費補助金基盤研究A、(1996年4月-2000年3月)

「フランス文学における身体-その意識と表現」、基盤研究A2、(2001年-現在に至る)

○今後の計画と展望

最優先の課題は、ルソーにおける言語論と政治思想に関する研究をまとめることである。博士論文でこのテーマを取り扱ってから、ルソーの『言語起源論』の新たな校訂版が刊行されたこともあり、最近の研究やこの時代の思想の中での言語論の役割に関する資料調査を踏まえつつ、長年取り組んできたこの問題を総括したい。このテーマは、単に言語論の研究にとどまらず、ルソーにおける人間論と芸術論、政治と想像力、理論と実践など、さまざまなレベルの相互連関を浮き彫りにしてくれるはずである。
この問題をまとめた後には、冒頭で取り上げたいくつかの研究テーマのいずれかに取り組みたい。目下、人間論を中心にディドロの思想や、18世紀フランスのユートピア思想などに特に興味をもっている。

京都大学教育研究活動データベース