上海の復旦大学文史研究院において、第七回東アジア人文研究博士学生ワークショップが開催されました。

3月18日~23日に、上海の復旦大学文史研究院において、第七回東アジア人文研究博士学生ワークショップが開催され、京都大学文学研究科の中国語学中国文学専修、中国哲学史専修、地理学専修、社会学専修の大学院生14名、ならびに木津祐子教授、池田恭哉准教授が参加しました。 このワークショップは、2013年より上海の復旦大学と京都大学の合同で行われてきました。初回の開催は京都、以降は上海と京都とで交互に開催されてきましたが、2017年より香港城市大学も加わって、三校合同のワークショップとなりました。今回が7回目となります。 今回のワークショップに参加した学生は、復旦大学21名(主催校)、香港城市大学8名、そして京都大学14名の計43名を数え、それぞれに充実した研究発表を行いました。19日は開幕式に引き続き、三校が合同で調査を進めてきた京都大学所蔵の「苗蛮図」について三校の学生たちが多角的に報告を行い、それに対して復旦大学・葛兆光教授による広い視野に立った講評がなされました。
19日午後から20日にかけては、「早期中国の歴史・文献・言語の考証」「分裂時代の宗教と文学」「唐代の宗教と文学」「宋遼金時代の社会集団と思想」「明清時代と東アジア海域」「芸術史の集中討議:図像と歴史研究」「思想史の集中討議:東アジア世界の近代的転換」「現代に向かう東アジア世界」「東アジア社会と都市研究」の9セッションが設定され、各大学の学生が司会進行を務める中、中国語・英語を駆使した多彩な研究発表(時間20分)が展開されました。また全セッションで学生らが講評の任を担い、発表のまとめを行いながら的確な問いを提起したことで、所定の時間を最大限に使った活発な意見交換が繰り広げられ、議論し尽くせなかった問題は、三校の教員5名も参加した最後の総合討論、さらには夜の懇親会の場に持ち越されました。 21日からは杭州への実地見学が行われました。21日の早朝に上海を出発し、午後は道中で良渚遺跡を参観しました。今からおよそ五千年前に現在の杭州市の西に花開いた良渚文化は、上流階級の墓室に埋蔵された多種多様な玉器によって有名であり、良渚遺跡博物院では、それら玉器ほかの出土品を、博物院スタッフの丁寧な案内によって参観できただけでなく、実際の宮殿の遺構にも踏み入れるという幸運に恵まれ、現地に行ってこそ実感できるスケールに圧倒されました。 22日は浙江省博物館にて浙江省の歴史をたどり、昼食には法喜寺で供される素食(精進料理)を味わいました。また杭州といえば、中国に数あるお茶の中でも評判の高い龍井茶の産地として世界に名を馳せますが、今回はその茶畑が広がる龍井村に行き、中国のお茶文化を体験しました。また最後には杭州の名刹たる霊隠寺を参拝し、実に盛りだくさんの見学内容でした。お茶と寺院は、ともに日本にもありますが、その味わいや結構、歴史の面で日本とは異なる部分も多く、その両者の対比を通じて様々なことを考えさせられ、さらにそれを発端として三校の学生間でも対話が広がり、大変に有意義なツアーだったと言えます。 今回で7回目となる本ワークショップでは、何度目かの参加になる学生同士がうまく意思を疎通し、また以前のワークショップに参加した上海近郊在住のOB・OGも準備や各セッションのコメンテーターとして運営に関わり、これまで以上に学生主体の形式となりました。今後も三校の関係を緊密にしていけば、より大きな成果が出るに違いないと確信させる、充実のワークショップでした。

ワークショップの様子は、こちらをご覧ください。

本事業は、下記の助成を受けました。
(1)京都大学重点戦略アクションプラン「京都大学・復旦大学・香港城市大学三校合同の京都大学所蔵東アジア関連文物研究」
(2)一般財団法人 橋本循記念会 調査・研究助成「京都大学蔵「苗蛮図」および和製中国古地図の総合的研究」
(3)アジア研究教育ユニット2018年度事業「復旦大学—京都大学—香港城市大学「東アジア人文研究討論会」」