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Wes Salmon on Causality

サモンによる因果性の分析

ウェス・サモン教授(1925-2001)は、近年、因果性と科学的説明の分析について精力的に仕事を行ってきた(Salmon 1984, 1998)。彼の見解は、2000年の春から夏にかけて、彼がここ京都大学の客員教授として提供した講義でも展開されたので、出席した院生、学生諸君には、まだ憶えている人たちもいるはずである。

さて、因果関係についての彼の見解は、ヒュームの古典的分析を十分に意識しつつ、ヒュームが見落とした「因果的つながり」を客観的世界の中に指摘してみせるというものである。

ヒュームによれば、「ある方向に運動する黄色いビリヤードボールが、別の方向に向かう赤いビリヤードボールにぶつかって、両方とも進路と速度を変える」という現象には因果関係が含まれる。

図 1 (ボールの衝突)

その因果関係のうちに客観的に認められる条件は、

という三つの条件にほかならない。普通の人々は、これに加えて「原因と結果の間の必然的なつながり」を想定しがちだが、これは、度重なる観察の結果から、観察者の心のうちに生み出された主観的な印象にほかならず、客観的な世界のうちに見いだされる条件は、前述の三つしかない、とヒュームは言うのである。

これに対し、サモンは次のような道具立てを用意して分析を始める。まず、われわれが因果性の分析において注目すべきなのは、単一の事象(出来事)だけでなく、プロセスもである。バットで打ったボールが空中を飛んである家の窓ガラスに当たる、という具体例を考えてみても、「ボールを打つ」「窓ガラスに当たる」という事象だけでなく、「ボールが空中を飛ぶ」というプロセスが不可欠であることがわかる。物理学においても、例えば相対論において、過去の事象Cと将来の事象Eとは、「世界線」と呼ばれるプロセスによってつながれている。サモンの着眼点は、こういったプロセスのうちに、客観的な「因果的つながり」の候補があるではないか、というところにある。

図 2 (先の図1について世界線を描けばこうなる)

しかし、ただ「プロセス」と言っただけでは、因果的なつながりにはならないかもしれない。そこで、次に、サモンは因果的プロセスとそうでないプロセスとを区別する条件を定式化しようとする。次図に示したような、円筒形のスクリーンの中央で投光器が回転しているものとしよう。このとき、光源からスクリーンに至る光のビームは間違いなく(光子または光波が伝わる)因果的プロセスである。しかし、スクリーン上を光のスポットが右から左へ走るプロセスは、光源の回転に依存して生まれる擬似プロセスでしかない。

図 3(因果的プロセスと擬似プロセス)

これら二種のプロセスを見分けるために、サモンは「マークの伝達」という(ライヘンバッハに由来する)基準を設定した。例えば、光源に赤いフィルターをかけると、ビームは赤色に変わり、「赤い」というマークがスクリーンにまで伝達される。これはホンモノの因果的プロセスに特有のことである。これに対し、スクリーン上のビームの軌跡の一点に赤い印をつけても、この印はビームについて回ることはない。擬似プロセスでは、このようにマークの伝達はなされない。同様に、走る自動車の運動は因果的プロセスであるが、その自動車の影の運動は、自動車の運動と光源との相互作用の結果派生した擬似プロセスにほかならない。 この基準は、後に何人かの論者の批判を受けて、「何らかの量の保存」(例えば、運動量の保存、エネルギーの保存など)という基準に置き換えられるが、このような基準によって因果的プロセスと擬似プロセス、あるいは因果的相互作用と擬似的作用とが区別できるという考えには変更はない。

サモンの基本的な考えは、マークにせよ、保存量にせよ、そういったものの伝達がなされるということが、因果的プロセスのエッセンスだということである。ちなみに、こういった基準を満たす因果的相互作用は、次の三種類に分類されるとサモンは言う。

このような、因果的プロセス、因果的相互作用の分析を補った上で、説明の因果説を練り上げたというのが、サモンの重要な貢献である。


References

Salmon, Wesley C. (1984) Scientific Explanation and the Causal Structure of the World, Princeton university Press.

------. (1990) Four Decades of Scientific Explanation, University of Minnesota Press, 1990 [Originally in Minnesota Studies, Vol. XIII, 1989].

------. (1998) Causality and Explanation, Oxford University Press.


Last modified July 2, 2002. (c) Soshichi Uchii

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