2011年度 講義と時間割

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2011年度  講義題目

特殊講義 氣多雅子 火4 西田幾多郎の
場所の思想の展開
西田幾多郎の場所の思想がどのように仕上げられ、どのような拡がりをもつのかということについて、理解を深める。西田の思想の宗教哲学的意義を考察することが最終的な目的である。『働くものから見るものへ』(1927年)において提示された西田の場所の考えが、『一般者の自覚的体系』(1930年)においてどのように「洗練」され「発展」させられたかを考察し、『無の自覚的限定』(1932年)においてどのような完成にいたったかを具体的テーマに即して考えてゆく。西田はこの書の序で、「ノエマ的限定としての永遠の今、ノエシス的限定としての絶対の愛、個物と一般との論理的関係、社会と歴史との発展的関係、具体的実在としての人格的自己の自己限定等、すべて私の立場からその意味が新たにせられ、みな非連続の連続として、その根柢に私のいわゆる無の限定の意味をもつということを明らかにした」と述べている。さらにこれらの中期の思想がどのような意義をもち、またどのような批判を受けてきたかについても考察する。
特殊講義 杉村靖彦 水4 身体・社会・歴史
―西田・田辺の哲学と
現代フランス哲学
1930年代から40年代にかけて、西田幾多郎と田辺元は、たがいに対する暗黙の批判をばねにしてそれぞれの哲学をダイナミックに展開させたが、両者が共通して目指していたのは、行為的身体性を根本的な形成因として組み込んだ独自の社会哲学・歴史哲学を形成することであった。こうした側面は、戦後の京都学派の宗教哲学では後景に退いてしまったが、現代の思想的状況において再検討に値する豊かな可能性を秘めているように思われる。その点に光を投ずるために、本講義では、身体性・社会性・歴史性の絡み合いを独特の仕方で考察した20世紀後半のフランス哲学者たち(メルロ=ポンティ、レヴィナス、デリダ、アンリ、ナンシー等)を経由することによって、西田の「歴史的身体」論や田辺の「種の論理」を新たな視点から批判的に読み解いてみたい。まずその最初の数回の授業で、(1)田辺の最初の西田批判(1930)から西田の死(1945)までの両者の思索展開をその時代背景とともに略述し、(2)この時期の彼らの思索とフランスの哲学者たちとの接点を、哲学的観点と哲学史的観点の両面から大づかみに描出する。その上で、身体性・社会性・歴史性をめぐる西田と田辺の思索の対立軸をポイエーシス(西田)とプラクシス(田辺)という形で整理することによって、両者における相互批判と相互影響の入り組んだ関係を解きほぐしていく。さらに、そうして抽出された彼らのユニークな着想をフランスの哲学者たちの思索とさまざまな経路で交差させることによって、その哲学的可能性を浮かび上がらせていく。こうした複眼的な考察を首尾よく遂行していくために、たとえば「労働」や「言語」といったいくつかのサブテーマを道標として用いていきたい。
特殊講義 仲原孝 水3 ドイツ神秘主義研究 「ドイツ神秘主義」と総称される特異な宗教形態について、その全体像をさぐるとともに、その現代的意義について考察する。 神秘主義という特異な宗教形態を手がかりとして、受講者各自の独自の宗教哲学的考察を展開できるようになることを、授業の目標とする。 授業で扱う主題はおおむね以下のとおり。1課題あたり2~3週の授業をする予定。1.ドイツ神秘主義の全般的特徴
2.ヒルデガルト・フォン・ビンゲン
3.エリザベト・フォン・シェーナウ
4.メヒティルデ・フォン・ハッケボルン
5.ゲルトルート・フォン・ヘルフタ
6.クリスティーネ・エーブナー
7.マイスター・エックハルト
8.ハインリヒ・ゾイゼ
9.ヨハネス・タウラー
10.ドイツ神秘主義と現代哲学
演習 氣多雅子 火5 M.ハイデッガー
『ニーチェ』を読む
ハイデッガーの『ニーチェ』第五部「ヨーロッパのニヒリズム」をテキストとして演習を行う。哲学のテキストの読み方を訓練するとともに、ハイデッガーのニヒリズムの思索について理解を深める。ハイデッガーがニーチェの思索をどのように読み解いたか、それに基づいてハイデッガーがニヒリズムをどのように彼自身の哲学の問題として受けとめていったか。
演習 杉村靖彦 水5 シモーヌ・ヴェイユ
『デカルトにおける科学と知覚』を読む
 
シモーヌ・ヴェイユが高等師範学校に提出した学位論文『デカルトにおける科学と知覚』(1930)の第二部を中心に読む。箴言のように研ぎ澄まされた晩年のテキストに比べれば、この学生時代の論文は、文章はなお生硬で論述も理路の辿りづらいものである。だが、とくに「もう一人のデカルト」に仮託して独自の思索を展開した後半部は、ヴェイユとフランス反省哲学の伝統とをつなぐ幾筋もの線を示しつつ、「身体」や「労働」といったモチーフを知覚論や科学論に織り込むことによって、その後の彼女の政治思想・宗教思想へと光を投げかけている。この論文の精読を通して、ヴェイユ思想全体の哲学的可能性をさまざまな角度から探っていきたい。最初の2・3回の授業で、論文全体の構成、第一部の概略、ヴェイユのデカルトに対する関わり方と師アランからの影響、さらにはアランの師のラニョーの知覚論が踏まえられていることなど、本論文の第二部を読んでいくために必要な予備知識を教師が提供する。その後の授業では、訳読および要約の担当者を決めて、一回2頁程度のペースで精読していく。読んでいる箇所の理解に資すると思われる場合には、ヴェイユの他のテクストや他の思想家たちのテクストを紹介し、授業の材料として取り込んでいきたい。
演習Ⅱ 氣多雅子
杉村靖彦
金3・4
(隔週)
宗教哲学
基礎演習・卒論演習
宗教哲学に関わる基本文献を教師とチューター役の大学院生の解説を手掛りに読み進めていくことで、概論と専門研究の橋渡しになるような知識と思考法の獲得を目指す。また、論文作成法の指導と卒論の中間発表も組み入れ、卒論執筆の道標となる授業を展開する。宗教哲学の基本文献と言えるような著作や論文を数点選び、事前に出席者に読んできてもらう。そして、毎回教師とチューター役の大学院生の解説をもとに、質疑応答と議論を行っていく。また、とくに論文を扱う際には、論述の仕方や思考法、文献の扱い方などにも注目し、論文の書き方や学ぶための材料とする。さらに、前期の終わりと後期の始めに卒論の中間発表の時間を設け、卒論指導のために役立てる。
演習Ⅱ 氣多雅子
杉村靖彦
金3・4
(隔週)
宗教学の諸問題  
演習参加者が、宗教学の諸問題のなかで各人の研究するテーマに即して発表を行い、その内容をめぐって、全員で討論する。研究発表の仕方と討論の態度を訓練するとともに、各人の研究を進展させることが目的である。最初の授業で、参加者の発表の順番とプロトコールの担当者を決定する。各人の発表は二回にわたって行う。即ち、発表者は1時間以内の発表を行い、続いてそれについて討論する。発表者はその討論をうけて自分の発表を再考し、次回にその再考の結果を発表して、それについてさらに踏み込んだ討論を行う。したがって、1回の授業は前半と後半に分かれ、前半は前回発表者の二回目の発表と討論、後半は新たな発表者の一回目の発表と討論となる。
講読 竹内綱史 木2  Hannah Arendt,
The Human Condition
を読む
 
現在ますます注目を集めているハンナ・アーレントの主著『人間の条件』を精読する。また同時に、哲学書を原書で読むにあたっての基礎的なスキルも学ぶことにしたい。 アーレント(1906-1975)の『人間の条件』(1958)は、「公共性」をめぐる政治哲学から、「社会的なもの」をめぐる近代論、「ビオスとゾーエー」をめぐる生命論、「赦しと約束」をめぐる宗教哲学など、様々な議論の焦点として広範な影響を及ぼしてきた。今年度の授業では、同書の中心的な章である第五章(Action)を丹念に読み進めたい。 訳読と当該箇所についての議論を中心に進めるが、論点が多岐にわたるため、受講人数や希望によっては訳読担当者以外に調べもの担当を決めて、アーレントが用いる術語の背景や彼女が言及する文献などを調べてもらうことにする。議論は積極的に参加することが望ましい。
講義 氣多雅子 月5 系共通科目(宗教学)講義  
 宗教哲学を中心として、宗教研究がどのような歴史を経て、どのような必然性をもって展開してきたか、ということを明らかにすることを通して、宗教という事象に対する理解と宗教学の可能性についての理解を深める。
 以下のような課題について授業をする予定である。1.宗教という概念(概念の成立、多義性、変容) 2.「宗教学」という言葉とその多義性(成立の経緯、研究の諸分野) 3.近代以前の宗教研究の歴史(神話的思惟と哲学的思惟、キリスト教と神学) 4.近世における宗教的状況の変容(宗教改革、近代科学の成立、理神論の登場) 5.宗教哲学の成立一(カント哲学の意義) 6.宗教哲学の成立二(シュライアマッハーの思想) 7.宗教哲学の展開(ドイツ観念論) 8.宗教批判の進展とニヒリズム(フォイエルバッハ、ニーチェ) 9.否定性をはらんだ宗教哲学(キェルケゴール、ハイデッガー) 10.日本の宗教哲学(西田幾多郎、波多野精一、西谷啓治)