2012年度 講義題目

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2012年度  講義題目
 

特殊講義 氣多雅子 火4 西田幾多郎の
歴史的世界の思索
【授業の概要・目的】   

西田幾多郎の場所の思想において、自己と他者の問題、歴史的世界の問題がどのように探究されているかを、理解する。西田の思想の宗教哲学的意義を考察することが最終的な目的である。

【授業計画と内容】 

『無の自覚的限定』において西田は、絶対無の自覚がそのノエマ的限定において客観界を基礎づける意義をもつことを明らかにしようとする。その考察から出発して、環境が個物を限定し個物が環境を限定するということをめぐる西田の思索をたどって、人格的自己の自己統一が社会という意義をもつと考える西田の立場を考察する。さらに、その立場が後期の著作においてどのような広がりと深まりをもつに至ったかを、具体的テーマに即して考えてゆく。特に注目するテーマは、西田の弁証法論理とはどのようなものであるか、彼の身体の考え方はどのような特質をもつか、ということである。これらの考察を通して、西田後期の思想がどのような意義をもち、またどのような課題をもつかを共に考えてゆく。 

特殊講義 杉村靖彦 水4 身体・社会・歴史
―西田・田辺の哲学と
現代フランス哲学(2)
【授業の概要・目的】  

1930年代から40年代にかけて、西田幾多郎と田辺元は、たがいに対する暗黙の批判をばねにしてそれぞれの哲学をダイナミックに展開させたが、両者が共通して目指していたのは、行為的身体性を根本的な形成因として組み込んだ独自の社会哲学・歴史哲学を形成することであった。こうした側面は、戦後の京都学派の宗教哲学では後景に退いてしまったが、現代の思想的状況において再検討に値する豊かな可能性を秘めているように思われる。その点に光を投ずるために、本講義では、身体性・社会性・歴史性の絡み合いを独特の仕方で考察した20世紀中盤から後半のフランス哲学者たち(コジェーヴ、メルロ=ポンティ、レヴィナス、デリダ、アンリ等)を経由することによって、西田の「歴史的身体」論や田辺の「種の論理」を新たな視点から批判的に読み解いてみたい。 

 

【授業計画と内容】 

本講義は昨年度からの続きである。まず最初の2回ほどの授業で、昨年度の考察を要約し、1930年代から社会哲学・歴史哲学的な色合いを濃くしていく西田と田辺の絶対無の哲学が、共に身体の弁証法的性格に立脚しつつ、ポイエーシス(西田)とプラクシス(田辺)を対立軸としていることを確認する。その上で、彼らの思索が同時代の西洋哲学の最前線の問題を共有している様子を、ハイデガーやベンヤミン、コジェーヴや初期レヴィナスなどの思索との突き合わせを通して明らかにしていく。その際、労働や交換、贈与という問題系を参照し、当時の人類学や社会学の理論にも目配りすることによって、西田の歴史的身体論や田辺の種の論理の中に、上記のフランス哲学者たちの思索との新たな交流可能性を切り開いていきたい。

特殊講義 吉永進一 金2 心身論から見た日本近代思想 【授業の概要・目的】 

 第二次大戦前においては、さまざまな宗教的な傾向を持つ心身技法が盛んに行われた。たとえば、禅を生理学で再解釈したもの、催眠術から生まれたもの、近世養生法の腹式呼吸法を用いるものなどがある。その実践者には多くの知識人も含まれ、とりわけ岡田式静坐法は教師、学生のあいだに広まった。また、その多くには、民衆宗教では生命主義救済観と呼ばれ、近代仏教では汎神論と呼ばれる一元論的な世界観が付随し、心、身、社会を視野に収めていた。この授業では、前期を具体的な心身技法の紹介、後期を近代宗教思想史との関係にあて、日本における宗教的遺産の近代化や変容、同時代に多発した世界的な心身技法の近代化などを論じる。これによって近代思想や近代仏教史の語られてこなかった面をこの講義で明らかにしたい。 

【授業計画と内容】 

前期は具体的な心身技法を紹介し原テキストを順に読んでいく。後期は心身技法の思想史を試みる。 

1 原坦山の生理学的禅
2 川合清丸と腹式呼吸
3 催眠術、脱呪術化と再呪術化
4 桑原俊郎と精神力
5 岡田式静坐法と自発性
6 静坐法と医療
7 太霊道と国家論
8 鎮魂帰神の法
9 お手当て療治と超国家主義
10 汎神論思想
11 仏教の国際化
12 禅と神秘主義
13 大拙とスウェーデンボルグ
14 リシャール夫妻
15 心身技法のグローバル化 

(1課題あたり1~2週の授業を予定している) 

演習 氣多雅子 火5 M.ハイデッガー
『ニーチェ』を読む
【授業の概要・目的】  

昨年に引き続き、ハイデッガーの『ニーチェ』をテキストとして演習を行う。哲学のテキストの読み方を訓練するとともに、ハイデッガーの独自の立場におけるニヒリズムの思想について理解を深める。

【授業計画と内容】 

ハイデッガーは1936~41年に断続的に「ニーチェ講義」を行い、それにいくつか論文を付け加えて1961年にネスケ社から『ニーチェ』全2巻を出版している。その後もハイデッガーが推敲を重ねたことは、全集版の『ニーチェ』全2巻から読み取ることができる。この長い過程は、ハイデッガーにとってニーチェが非常に重要な対決の相手であったことを知らしめる。今年度の演習では第7部「ニヒリズムの存在歴史的規定」を扱い、ハイデッガーがニーチェ解釈を通してニヒリズムをどのような課題として受けとめていったか、その過程で存在歴史という観点をどのように熟成させていったかを読み解いてゆく。

演習 杉村靖彦 水5 前期 

P・リクール 「エマニュエル・レヴィナス、証言の哲学者」(1989)を読む      

  

 
 
 
 
 
 
 
 

後期

 シモーヌ・ヴェイユ 『デカルトにおける科学と知覚』 を読む

【授業の概要・目的】  

この論文は、リクールの主著『他者としての自己自身』(1990)の前年に発表されたものであり、後期レヴィナスの「証言」概念に的を絞ったレヴィナス論であると同時に、「自己の証し」を軸とする晩年のリクールの「自己の解釈学」の立場を簡潔明確にうち出している。また、レヴィナスだけを論じるのではなく、証言という問題系をめぐってハイデガー、ナベール、レヴィナスの三者の思索がいかなる関係に立つかを整理した上で、リクール自身は自らの立場をナベールの系譜上に位置づけている。リクールの哲学に関心をもつ人だけでなく、ハイデガーの影響を強く受けたフランス哲学者たちが共有する問題構成を理解したい人にとっても、必読の論文である。この授業では、必要な哲学的知識を教師が補いながら、半期で論文全体を通読し、その内容について出席者間で充実した議論が行えるように工夫したい。

【授業計画と内容】 

最初の授業で、論文全体の構成、およびリクール、レヴィナス、ハイデガー、ナベールについての最小限の予備知識を与えるべく、教師が解説を行う。その後の授業では、訳読および要約の担当者を決め、1回2-3頁ほどのペースで読み進めていく。単なる原典講読にとどまらず、テクストを出席者間での議論と哲学的考察の材料として最大限利用できるように、毎回授業終了時にその回進んだ分の模範訳を配布するなど、さまざまな工夫を試みたい。


  【授業の概要・目的】   

昨年度の演習に引き続いて、ヴェイユが高等師範学校に提出した学位論文『デカルトにおける科学と知覚』(1930)の第二部を読む。箴言のように研ぎ澄まされた晩年のテクストに比べれば、この学生時代の論文は、文章はなお生硬で論述も理路の辿りにくいものである。だが、とくに「もう一人のデカルト」に仮託して独自の思索を展開した第二部は、身体や労働といったモチーフを知覚論や科学論に織り込むことによって、その後の彼女の政治思想・宗教思想へと光を投げかけている。この論文を同時期の幾つかの小論とあわせて精読することによって、ヴェイユ思想全体の哲学的可能性をさまざまな角度から探っていきたい。

【授業計画と内容】 

最初の2回ほどの授業で、このテクストの論構成と昨年読んだ箇所の概略を教師が解説する。その後の授業では、訳読および要約の担当者を決めて、1回2頁程度のペースで精読していく。読んでいる箇所の理解に資すると思われる場合には、ヴェイユの他のテクストや他の思想家たちのテクストを紹介し、授業の材料として取り込んでいきたい。 

演習Ⅱ 氣多雅子
杉村靖彦
金3・4
(隔週)
宗教哲学
基礎演習・卒論演習
【授業の概要・目的】   

宗教哲学に関わる基本文献を教師とチューター役の大学院生の解説を手がかりに読み進めていくことで、概論と専門研究の橋渡しになるような知識と思考法の獲得を目指す。また、3回生以上の参加者は、卒論執筆に向けた研究発表を行う。
 宗教学専修の学部生を主たる対象とするが、哲学と宗教が触れ合う問題領域に関心をもつ2回生、および他専修学生の参加も歓迎する。 

【授業計画と内容】 

宗教哲学の基本文献と言えるような著作や論文を数点選び、事前に出席者に読んできてもらう。そして、毎回教師とチューター役の大学院生の解説をもとに、質疑応答と議論を行っていく。また、研究発表の際には、論述の仕方や文献の扱い方なども指導し、論文の書き方を学ぶための機会とす
る。 

演習Ⅱ 氣多雅子
杉村靖彦
金3・4
(隔週)
宗教学の諸問題  
【授業の概要・目的】  

演習参加者が、宗教学の諸問題のなかで各人の研究するテーマに即して発表を行い、その内容をめぐって、全員で討論する。研究発表の仕方と討論の態度を訓練するとともに、各人の研究を進展させることが目的である。 

【授業計画と内容】 

最初の授業で、参加者の発表の順番とプロトコールの担当者を決定する。各人の発表は二回にわたって行う。即ち、発表者は1時間以内の発表を行い、続いてそれについて討論する。発表者はその討論をうけて自分の発表を再考し、次回にその再考の結果を発表して、それについてさらに踏み込んだ討論を行う。したがって、1回の授業は前半と後半に分かれ、前半は前回発表者の二回目の発表と討論、後半は新たな発表者の一回目の発表と討論となる。 

講読 鶴真一 木4 Mackie, The Miracle of Theism を読む  【授業の概要・目的】 

 ・この授業は宗教学関連の原典を読むことを目的とするものです。原典に当たる経験を積んでもらうだけでなく、とりわけ宗教哲学における議論や知識を学んでもらうことを企図しています。 

・テキストとしては、マッキーの『有神論の奇蹟』を読み進めていきます。マッキー(John Leslie Mackie, 1917-1981)はオーストラリアの倫理学者として有名ですが、この著書は「神の存在証明」に関する議論を一通り解説した上でマッキー独自の解釈が平易な英語で記述されており、宗教哲学の入門書として最適なものとなっています。 

【授業計画と内容】 

・事前に担当者を決め、自分の担当箇所を発表してもらいます。担当者は自分の担当箇所を責任をもって訳出し、質問された場合に回答できるよう内容についても十分に理解しておいてください。 

・発表内容にもとづいて、読解に関する指摘や考え方について講師から解説を加えます。 

講義 氣多雅子 月5 系共通科目(宗教学)講義  【授業の概要・目的】 
 宗教哲学を中心として、宗教研究がどのような歴史を経て、どのような必然性をもって展開してきたかを明らかにすることを通して、宗教という事象に対する理解と、宗教学の可能性についての理解を深める。

 【授業計画と内容】 
以下のような課題について授業をする予定である。 

1.宗教という概念(概念の成立、多義性、変容) 
2.「宗教学」という言葉とその多義性(成立の経緯、研究の諸分野) 

3.近代以前の宗教研究の歴史(神話的思惟と哲学的思惟、キリスト教と神学) 

4.近世における宗教的状況の変容(宗教改革、近代科学の成立、理神論の登場)  

5.宗教哲学の成立一(カント哲学の意義)  

6.宗教哲学の成立二(シュライアマッハーの思想)  

7.宗教哲学の展開(ドイツ観念論)  

8.宗教批判の進展とニヒリズム(フォイエルバッハ、ニーチェ)  

9.否定性をはらんだ宗教哲学(キェルケゴール、ハイデッガー)  

10.日本の宗教哲学(西田幾多郎、波多野誠一、西谷啓治))