2010年度 講義題目

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2010年度 講義題目
特殊講義 氣多雅子 火4 西田幾多郎の場所の思想  
  西田幾多郎の場所の思想を理解し、西田哲学全体におけるこの思想の位置づけを明らかにすることをめざす。西田の思想の宗教哲学的意義を考察することが最終的な目的である。 大正12年から昭和2年までの5年間に執筆された論文の集録である『働くものから見るものへ』の後篇において、西田の場所の考えが提示された。そして昭和3~4年公刊の『一般者の自覚的体系』では、「この書は『働くものから見るものへ』の後篇において述べた考えを基として種々の問題を論ずるとともに、その考えを洗練し発展させたものである」と言われる。さらに昭和5~7年の論文の集録である『無の自覚的限定』の序には、「『働くものから見るものへ』の後編から『一般者の自覚的限定』を通じて、紆余曲折を極めた私の考えは、この書において粗笨ながらひとまずその終に達したかと思う」と書かれている。西田がこれらの論文で追求した「場所」の考えをテキストに即して明らかにし、その上で、この思想の射程を論考したい。     

特殊講義 杉村靖彦 水4 リクールとデリダ―晩年の思想的交流とその宗教哲学的意味
  現代フランスを代表するこの二人の哲学者について、「赦し」や「贈与」をめぐる晩年の両者の応酬を手掛かりに、その交錯の中で各々の思索の最終的な到達点を描き出す。それを通して、「生死」と「善悪」をめぐる現代の宗教哲学的考察のありうべき姿を追究する。
  
以下の内容について講述する。
*解釈学と脱構築:リクールとデリダの哲学の基本性格の略述
*ハイデガー哲学の換骨奪胎:1980年代以降のリクールとデリダ
*アポリアから立ち上がる思索:証言論・贈与論における両者の交錯
*死の問いの現在、悪の問いの現在:その政治哲学・歴史哲学的地平
*生/死:「…まで生き続ける」(リクール)「生きることを学ぶ、終に」(デリダ)
*悪/赦し:「困難な赦し」(リクール)「不可能な赦し」(デリダ)
*現在を考える、宗教を考える:グローバル化世界における「公共空間」と「歴史的時間」の行方      

演習 氣多雅子 火5 ニーチェ『善悪の彼岸』を読む   前年度に引き続いてニーチェの『善悪の彼岸』をテキストとして演習を行う。哲学のテキストの読み方を訓練するとともに、二〇世紀の哲学・思想に決定的な影響を与えたニーチェ思想の理解を目指す。
  ニーチェの『善悪の彼岸』は1884~5年に執筆された著作である。1882~5年に執筆された『ツアラトゥストラはこのように語った』と並んで、ニーチェ自身が公刊した著作としては、最も成熟した思想を読み取ることのできるものであるが、その屈折した表現の読解は容易でない。本年度は第二章「自由な精神」を読む。彼の言う「自由な精神」とは何を意味するのか。ニーチェは誤って「自由な精神」と呼ばれる者たちについて語り、現れつつある「新しい哲学者」を「自由な精神」と呼ぶ。その「自由」ということのなかに、真理についてのニーチェの徹底した思想が潜んでいる。この思想のもつ現代的意義について、演習の中で一緒に考えてみたい。      

演習 杉村靖彦 水5 リクールとデリダを読む  
  リクールとデリダの最晩年および死後刊行のテクストから、両者の思索の重なり合いと分岐点をよく示しているものを何点か選び、対比的に読み進める。それによって、現代の哲学に大きな足跡を残した二人の思索の最終的な到達点を立体的に理解することを目指す。
  リクールについては死後刊行されたVivant jusqu’à la mort (2007)、デリダについては死の直前のインタビューを収めたApprendre à vivre enfin (2005)を主たる読解対象とし、双方を突き合わせて読み進めることによって、生と死をめぐる二人の考察の姿を浮き彫りにしたい。あわせて、この考察の背景にあるリクールとデリダの独特のハイデガー解釈が展開されている諸論考、および「赦し」をめぐる二人の応酬を伝える諸論考を抜粋して読むことによって、上の二つのテクストから得られた理解をさらに奥行きあるものにしていきたい。      

演習 神尾和寿 月2 ハイデッガーの言語論を読む
 ハイデッガーの『言語への途上』(Unterwegs zur Sprache)所収の論文「言語についての対話から」の読解を通して、有(Sein)を思索する言葉のあり方を洞察し、議論していく。この対話形式のテキストは、手塚富雄のハイデッガー訪問を契機として、創作されたものである。そこでは、西洋の自己克服という課題のもとに、西洋と東洋との対話の可能性が探られている。同時に、そうした過程のなかで、自らの思索の歩みの意義や方向性もハイデッガー自身によって再把握されていき、その点でも、有意義であり興味深い。      

演習 杉村靖彦 金3・4
(隔週)
宗教哲学文献演習・卒論演習
 宗教哲学に関わる基本文献を、教師とチューター役の大学院生の解説を手がかりに読み進めていくことで、概説と専門研究の橋渡しになるような知識と思考法の獲得を目指す。また、論文作成法の指導と卒論の中間発表も組み入れ、卒論執筆の道標となる授業を展開する。      

演習Ⅱ
氣多雅子
杉村靖彦      

金3・4
(隔週)
宗教学の根本問題
 演習参加者が、宗教学の諸問題のなかで各人の研究するテーマに即して発表を行い、その内容をめぐって全員で討論する。研究発表の仕方と討論の態度を訓練するとともに、各人の研究を進展させることが目的である。宗教学専修の大学院生は必須である。
講読 竹内綱史 木2 Hannah Arendt, The Human Conditionを読む
  現在ますます注目を集めているハンナ・アーレントの主著『人間の条件』を精読する。また同時に、哲学書を原書で読むにあたっての基礎的なスキルも学ぶことにしたい。 アーレント(1906-1975)の『人間の条件』(1958)は、「公共性」をめぐる政治哲学から、「社会的なもの」をめぐる近代論、「ビオスとゾーエー」をめぐる生命論、「赦しと約束」をめぐる宗教哲学など、さまざまな議論の焦点として広範な影響を及ぼしてきた。授業では同書を最初(Prologue)から丹念に読み進めて行きたい。訳読と当該箇所についての議論を中心に進めるが、論点が多岐にわたるため、受講人数や希望によっては訳読担当者以外に調べもの担当を決めて、アーレントが用いる術語の背景や彼女が言及する文献などを調べてもらうことにしたい。一回に進む量は5~10ページを目標とするが、必ずしもそれにこだわらず、内容のある議論ができれば1ページでも構わない。それゆえ、議論には積極的に参加することが望ましい。     

講義 氣多雅子 月5 宗教学講義
 宗教哲学を中心として、宗教研究がどのような歴史を経て、どのような必然性をもって展開してきたか、ということを明らかにすることを通して、宗教という事象に対する理解と宗教学の可能性についての理解を深める。