安部浩「人間存在論」授業概要

安部浩
「人間存在論」

■授業の概要・目的
哲学においては畢竟「汝[自身]の事柄が問題とされている(tua res agitur)」。現象学の鼻祖、E. フッサール(1859-1938)は、「哲学の名の下で自分が本来何を目指さんとしているのか」という問題をめぐって大略このように述べている。己事究明―これこそが現象学の出発点である。但しその際、現象学が問題にせんとするのは、あくまでも「世界[/世間]的に(weltlich)存在する者としては前提され続けることが[…]可能でない」ような「純粋に自己自身において、また自己自身で存在する私」に他ならぬ。だがこうした最早尋常ならぬ有り様においてあるところの「私」とは、一体何者であるのか。我々は何故にそのような「私」を問題にすべきであり、そして又如何にしてこれに接近しうるのか。フッサールが世に残した膨大な著述群の中でも、就中『イデーンⅠ』は、彼の主著と目せらるべき著作である。我々はその主要な箇所を読み進めていくことで、以上の問の考察に努めることにしよう。そしてそれにより、語学・哲学上の正確な知識、及び論理的思考力に基づく原典の厳密な読解力を各人が涵養すること、そしてこの読解の過程において浮上してくる重要な問題をめぐる参加者全員の討議を通して、各人が自らの思索を深化させていくことが、本演習の目的である。

■授業計画と内容
原則的には毎回、予め指名した二名の方にそれぞれ、報告と演習の記録を担当して頂くことにする。それぞれの回には、次の箇所を読む予定である。以下、内容の梗概に続いて、括弧内に教科書の節番号を示す。
  1.ガイダンスと前期の復習 
  2.「純粋意識の領域・その5」(56-59)
  3.「純粋意識の領域・その6」(60-62)
  4. 「ノエマ的意味と対象への関係・その1」(128-129)
  5.「ノエマ的意味と対象への関係・その2」(130-132)
  6.「ノエマ的意味と対象への関係・その3」(133-134)
  7.「ノエマ的意味と対象への関係・その4」と「理性の現象学・その1」(135-136)
  8.「理性の現象学・その2」(137-139)
  9.「理性の現象学・その3」(140-142)
 10.「理性の現象学・その4」 (143-145)
 11.「理性論の問題構成の普遍性の諸段階・その1」 (146-148)
 12.「理性論の問題構成の普遍性の諸段階・その2」 (149)
 13.「理性論の問題構成の普遍性の諸段階・その3」(150-151)
 14. 「理性論の問題構成の普遍性の諸段階・その4」(152-153)
 15. 総合討論

■成績評価の方法・基準
平常点で評価する。

■教科書
Edmund Husserl 『Ideen zu einer reinen Phaenomenologie und phaenomenologischen Philosophie, Erstes Buch (Gesammelte Schriften Bd. 5) 』(Meiner ) ISBN:3-7873-1094-0

■参考書
フッサール『イデーンⅠ-Ⅰ』(みすず書房) ISBN:4-622-01916-7
同上『イデーンⅠ-Ⅱ』(同上) ISBN:4-622-01917-5
E. Husserl 『Ideas Pertaining to a Pure Phenomenology and to a Phenomenological Philosophy, First Book 』(Springer ) ISBN:978-94-009-7445-6

■その他
受講者には、自分の担当箇所や各回に扱う部分に限らず、テキストを遍く熟読した上で出席することが求められる故、その点には十分留意されたい。
※オフィスアワー実施の有無は、KULASISで確認してください 。