本「インド古典学」研究室は、従来あった「インド哲学史」と「サンスクリット語学サンスクリット文学」の両研究室(専修)を統合して、新たに2004年に開設されたものである。両研究室の歴史は古く、1906年(明治39年)に京都帝国大学の文科大学が開設されたのと同時に、「印度哲学史」講座が設置され、「梵語学梵文学」(サンスクリット)の講座は、1910年(明治43年)に開設されている。両講座は、それぞれ哲学と語学・文学という異なった学問領域を対象とするが、18世紀末ヨーロッパに誕生し19世紀を通じて大きく発展した「インド学」(Indology)を共通のディシプリンとするものであり、共にサンスクリット文献学を学問の基礎とする点で、当初より親密な関係をもって、京都大学における研究・教育活動を行ってきたが、更に一層の連携をはかり、サンスクリット研究の世界的拠点として強固な基盤を築くために統合したものである。
サンスクリットは、厳密には紀元前数世紀に規範化された古代インド・アーリア語を意味するが、本専修では、この言語で著された文献と並んで、時代的にサンスクリットに先行するヴェーダ語、サンスクリットの俗語形である「中期インド」諸語、一部の仏教文献に見られる仏教梵語、叙事詩に特有の叙事詩サンスクリットなど、古代のインド・アーリア系言語で編纂された膨大な量の文献を研究の対象としている。また、サンスクリット文献と密接な関係をもつ古代イラン語文献やタミル語の古典文献も扱われることがある。「インド古典学」専修の役割は、過去のサンスクリット学の研究成果を継承しつつ、古代インドの言語、文学、哲学、宗教、文化史等の研究を行い、その成果を発展させつつ、次世代に引き継ぐことにある。
専修主任の赤松は、インド古典期における認識論・論理学の展開を主題として研究を続けてきたが、近年は主に言語哲学に重点を置いて、言語をめぐるインド思想の展開を文法学派と論理学派の両方の文献から探求しつつ、「思想と言語の問題」についての考察を続けている。准教授の横地は、古典サンスクリット文学と、ヒンドゥー教の神話・伝説を多く含むプラーナ文献の研究を専門としており、とりわけ、ヒンドゥー教女神神話の形成・発展について詳しい。外国人教師アーチャールヤは、インド哲学文献全般に通じ、写本学、碑文学にも精通している。このほか、協力講座の教授として人文科学研究所から藤井正人の協力を得ている。藤井は、ブラーフマナやウパニシャッドなどの文献、ヴェーダ祭式に関する教育・研究を実施している。また、毎年学外から数名の講師を招き、中期インド語、土着文法学、古典文学、哲学史、宗教史、文化史などの授業を開講している。
(文責 赤松明彦)
研究室スタッフ (2009年度)
教授(専修主任) 赤松明彦, Ph.D. (Paris), インド哲学
准教授 横地優子, Ph.D. (Groningen)古典サンスクリット文学、プラーナ文献
教授(協力講座) 藤井正人, Ph.D. (Helsinki)(人文科学研究所), ヴェーダ文献
外国人教師 Diwakar Nath Acharya, Ph.D. (Hamburg), インド哲学・写本学・碑文学
講師 八木徹 (大阪学院大学教授), Ph.D. (Paris), 土着文法学
講師 山下勤(京都学園大学), Ph.D. (Groningen), インド医学
講師 阪本純子(宮城学院女子大学),集中講義「古代インド宗教における「髪と髭」の象徴性」
講師 北田信 (東方学研究会),ヒンディー語
講師 梶原三恵子, Ph.D. (Harvard), ヴェーダ学,サンスクリット
講師 赤羽律, Ph.D. (Kyoto), 中観派仏教
講師 山口周子, Ph.D. (Kyoto), パーリ語
講師 八木綾子, Ph.D. (Kyoto), アルダマガディー
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