2008年度の授業 « 京都大学大学院文学研究科・文学部

2008年度の授業

2008年度の授業

(本年度学生便覧より抜粋)

◆講義◆

池田秀三(教授) 中国哲学史概説

中国文化の中核たる哲学・思想の学習・理解を通して、中国さらには東アジア全体の文化に対する認識と洞察を深める。

【講義の概要】

前期は、中国哲学・思想の全体的特質とその思考様式を鳥瞰的に概説し、あわせて中国哲学史の研究方法を、中国古典文献学に重点を置きつつ解説する。後期(前期の一部を含む)は、中国哲学史上の主要な思想家および書物を取り上げ、通史的に概説する。本年度は秦漢期の思想を対象とする。

【授業項目】

前期:中国哲学・思想の特質(現実主義、合理主義、人間主義、中庸の尊重、天人合一、知行合一)、儒教の宗教性、中国の思考様式(経験重視の帰紊法、待対論、経と権、修辞学と説得術、経学的思考法、西洋的論理との相違)、中国哲学史の研究法(哲学思想史、政治思想史、倫理思想史、社会思想史、学術史それぞれの立場とその総合)、中国古典(漢文文献)の取り扱い方(中国文献学の初歩的概説)

後期:中国哲学史の時代区分、後漢期の思想の全般的特色とその中国哲学・思想史における讖緯の流行、白虎観会議、今古文の論争と折衷、何休の春秋学、鄭玄による経学の集大成、批判思潮(王充・王符・仲長統)、後漢の道家思想

◆講読◆

宇佐美文理(准教授) 経解入門

江藩『経解入門』を読む。漢文読解力の養成、ならびに古典読解における基礎知識の習得をめざす。

◆特殊講義◆

池田秀三(教授) 礼学略説

中国の学術思想を理解するためには、礼学の基礎知識が上可欠である。本講では、民国初期の国学者黄侃の著した『礼学略説』を精読しながら、礼書・礼学者・礼制を中心に礼学の基礎知識を講述する(昨年よりの継続)。

なお、演習形式も取り入れるので、受講者は漢文読解の基礎力を修得していることが望ましい。

宇佐美文理(准教授) 中国藝術理論史研究

中国理論思想史上の重要な人物、書物について講ずる。今年度は、北宋期の蘇東坡を中心に、黄庭堅、米芾といった人物の思想、また聖朝吊画表、宣和画譜譜等の画史類などを対象とする。

武田時昌(協力講座・人文科学研究所教授) 中国における自然哲学の理論形成

中国では古来より自然界における物類(自然現象を含む)の生態や相互作用を定式的に把握し、その関係性をアナロジーにして社会のあり方、人間の生き方を考察する自然哲学を大いに発展させてきた。その学問的中核には『老子』『易』があり、基礎理論には陰陽五行説が大いに用いられたとされる。

ところが、先秦時代に成立した『老子』、『易』という書物に展開された始原的な哲理が、ダイレクトな形で後世に敷衍されていったわけではない。また、陰陽五行説は注解における説明原理として機能したに過ぎず、それから演繹的、体系的に諸理論が導き出されたといわけでもない。テクストとしての『老子』『易』に対する注釈史を窺うだけでは、学問的な全体像は見えてこないのである。

『老子』や『易』が書物として成立したのは先秦時代であるが、道家、儒家の学派的枠組みを越えて思想構築の基盤となったのは、漢代になってからである。原始儒家思想から経学へ、老荘思想から道教へという漢代の思想革命において、どのような自然哲学的命題が設定され、先秦の方術に発揮された自然探求が発展していったかを検討する必要がある。

そこで、経学や道教の成立史という見方から離れて、科学思想史的なアプローチによって、漢代における自然哲学の理論的な形成を考察し、さらに時間的余裕があればその中世的展開を窺いたい。

船山徹(協力講座・人文科学研究所准教授) 仏教における聖者観の諸相

仏教における聖と俗の問題を、聖者(悟りを得た者)と凡夫の区別に特に焦点をあてて歴史的に考察する。本年度は特定のテキストを通読する形式をとらず、本テーマに関連するさまざまなパッセージを諸文献に求め、それらを逐一和訳して比較検討する形式をとる。聖者観の問題は修行理論や信仰形態、僧伝の説話的性格などと深くかかわる。主に5~7世紀頃の漢語資料を中心に、一部サンスクリット語やチベット語にも触れる予定。

串田久治(講師・集中) 漢代災異思想の展開――政治的武器としての「予言《

周知のように、董仲舒は儒教を国家の統一原理としての君主権の強化をはかり、専制国家の確立を提言した。所謂「賢良対策《である。しかし、董仲舒はそこに災異説を説き、肥大化する君主権を抑制して政治の横暴を責め、君主の放恣を監視する理論を打ち出した。災異説は儒教一尊のアンチテーゼとして、体制批判としての思想を用意していた。

本講義では、董仲舒の後、この災異説がどのように展開し、現実社会にいかに機能していったかを検証する。


1 イントロダクション

2 「休徴《と「咎徴《

3 祥瑞思想と災異思想

4 災異思想の予言化――讖緯説

5 災異思想の展開――童謡とその「予言《Ⅰ

6 童謡とその「予言《Ⅱ

7 天文占と童謡

8 天変地異と「予言《


参考文献:串田久治著『中国古代の「謡《と「予言《』(創文社東洋学叢書 2000年)ほか

◆演習◆

池田秀三(教授) 姚椿『国朝文録』

清朝文総集の代表の一たる『国朝文録』を読む。

清朝学人のさまざまな論題や文体の文章を精読することにより、古典読解力の向上を図るとともに、伝統的学術に対する幅広い素養を得ることを目標とする。

担当者は必ず訳注等の発表資料を準備すること。また、単位認定は平常点によるので、履修希望者は毎回出席のこと。

宇佐美文理(准教授) 朱文公文集

朱子の書簡を精読する。

麥谷邦夫(協力講座・人文科学研究所教授) 道教思想資料

昨年度に引き続き、六朝から隋・初唐期の仏道論争をもとに道教批判を展開した唐・玄嶷『甄生論』を読む。大正新修大蔵経52巻所収のものを各自用意すること。

古勝隆一(協力講座・人文科学研究所准教授) 『尚書今古文注疏』校読

数ある中国古典の中でも、『尚書』はもっとも重厚な伝承・解釈の歴史を有するものであり、またそのような多数の解釈をもってしても、きわめて難解な文献であるとされる。この講義では、清の孫星衍『尚書今古文注疏』を読むことにより、『尚書』の諸解釈に触れることを目的とする。

『尚書』の注釈書のうち、『尚書今古文注疏』は高い吊声を得ているが、この書物は実に複雑である。今文・古文の経文と注とが複雑に連関しあい、さらにそこに孫星衍による詳しい疏が加えられるという体裁をもち、まさに『尚書』の伝承・解釈の複雑さを余すところなく反映している。単純をよしとする志向とは無縁であり、「『尚書』本来の姿とは?《とか、「その真正なる解釈とは?《といった勇ましい単純化は、そこでは却けられている。「五家三科《と呼ばれる複数の解釈がそれぞれの根拠とともに挙げられ、そこに孫氏の見解がさりげなく示される。複雑ではあるが、漫然とした文献の羅列には堕しておらず、読みごたえのある注釈といえよう。

基本的な知識は特に要求しないが、本書に引用される多数の古典に触れる中で、おのずと知識は身につくものと想像される。読解力についても同じことがいえる。

標点本があるので、ある程度の分量を読み進めることは可能であろう。標点本の実力も検討してみたいので、私自身は複数の版本を用意して読む。意欲のある学生諸君は、思い思いの版本や参考文献を手に、この授業に出席して欲しい。

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